ニッケイ新聞 2009年12月11日付け
田中宇さんの国際情勢解説を読んで、世界は米国一極覇権体制からアジア軸、アラブ軸、アフリカ軸、南米軸などと多極化していくのかとの関心がわき、カンピーナス州立大学のルイス・アフォンソ・シモンイス教授の講演「国際金融危機、ドルの否認と地域通貨の誕生」を聞きに行った▼結論から言えば、南米軸の中心と期待されるメルコスールには「進展がない」、07年に発足した南米諸国連合(UNASUR)や地域統合を目指すバンコ・スル(南米銀行)構想は「脆弱で理想主義的」とかなり手厳しい。「パラグアイやボリビアなど、ルーラはいくつかの〃火事〃を消し止めることはできたが、将来への前向きな筋道を作ったわけではない」との見解を披露していた▼「隣の芝生は青い」のかもしれないが、同教授の見方では「中国は内需拡大で成長を続け、上海を世界の金融センターにする明らかな戦略を持っており、アジアはすでに貿易の半分を域内に切り替えてきている」と分析し、「ブラジルにはそのような戦略はない」と一刀両断している▼注目の伯ア現地通貨協定も「『亜国にはドルを使う文化があるから』と否定され盛り上がらない。文化の問題だから時間がかかる」とも。「中国の台頭など全てが多極化に向かっているが、ドルが占める世界的比重は依然重く、当分は米国が覇権国であり続ける」と締めくくった▼少なくともブラジルとアフリカ諸国、アラブ諸国との急接近などの動きは進んでいるようにみえる。もしかして多極化は、地域中心国同士のつながり強化というグローバルな動きをテコに、徐々に足下の地域に影響力を広げるのだろうか。 (深)