2009年12月12日付け
2009年第1四半期から、日本企業のブラジルに対する関心が高まっている。
某有名伯字紙が6月にJETRO(日本貿易振興機構)サンパウロセンターに行ったインタビュー記事によれば、同センターへのビジネスに関する問い合わせ件数は、海外にある55のJETRO事業所の中で15位だったものが、世界金融危機後、6位に上昇しているという。
ルーラ大統領率いるブラジルは、日本の首相が次々と代わってゆく中、経済危機に強い数少ない国として、またBRICsの一員として国際シーンで存在感を示し続けている。
さらに、ブラジルの農耕可能な土地は3億5500万ヘクタールと世界最大を誇るものの、7200万ヘクタールしか作付けされていない。北米が2億7千万ヘクタール農耕可能な土地に対して1億7500万ヘクタール使用しているのに比べ、まだ余力がある。
もう一つのブラジルの有利な点として、使用可能な水資源があげられる。地球上にある真水のうち2割を保有する。
対する中国は、ブラジルよりも大きい領地を有しているものの、農業に利用できる土地はたった2・7%のみ。よって2億6千万ヘクタール以上が牧草地帯で農業は行われておらず、北部の寒冷地域にいたっては砂漠化の傾向があり、水資源が不足している。
ブラジルの持つポテンシャルをいくつかあげたが、日本は危機によって今後の投資の可能性をブラジルに見出し、大きな機会と捉えている。
日本側の経済危機の反応は、10月にリオデジャネイロで開催された「日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議 ※」会合で、ブラジルへの投資継続が発表されたことからも見て取れる。この会議には、新日本製鉄やトヨタ、JBIC(国際協力銀行)、日本政府関係者が参加した。(※=04年に設置された日伯21世紀協議会により06年に設置された、日伯経済活性化の具体化を目的としたグループ)。
また、中国政府側が鉱物資源、エネルギー資源、食料生産のポテンシャルを持つアフリカ諸国を頻繁に訪れていることが、日本のTICAD(アフリカ開発会議)を通じたアフリカ支援の動機付けとなっている。
日本とブラジルの両国と、モザンビーク、コンゴ、アンゴラ、パラグアイ、ボリビア、エクアドルなどとの3カ国間の強いパートナーシップが進められている。これは、日本とアフリカ諸国やラテン諸国との文化的困難を考慮して始められ、日本政府が舵取りをしている。
社会、教育、衛生分野だけでなく、ブラジルがリーダーシップを発揮するアグロビジネス、特にEMBRAPA(ブラジル農事試験場)によって国際的に地位を確立されている熱帯農業とバイオマスエネルギー分野でのパートナーシップによるイニシアチブは、認められてきているところである。
日本とブラジルの2国間の貿易を見てみると、ブラジルの主要な輸出10品目はすべて資源で、七つがアグリビジネスに関するもの、他が鉱物資源やセルロースに関するもの。日本からの輸入は工業製品が占めており、早急にこれらの輸出産品へ付加価値をつけることが必要だと考える。
昨年12月中旬に東京で行われた国際シンポジウムでは、日伯の主要大学関係者も出席のもと、100人もの日伯の事情に精通している企業家が集まり両国関係の未来について意見を交換しあった。
その後も、学術、企業単位で2国間の可能性について議論を始めている。
ブラジルは、日本、韓国、台湾、中国への輸出を増やすために、末端にいる消費者の要求を汲み取り、早急に市場を開拓する必要性を感じている段階にある。
一方で、日本もJETROや貿易会社、商工会議所、県人会、各県の国際交流課を通じて、または個人で日本から企業家が来伯し、無数のビジネスの話を持ってきており、それらは興味の違いや多様さを見せている。
山中イジドロ(やまなか・イジドロ)
サンパウロ州バストス市出身。農業技師。コチア産業組合、サンパウロ州農務局、連邦水産開発庁勤務などを経て、03年から07年まで連邦農務省の大臣特別補佐官。さまざまな日伯政府間のプロジェクトに関わる。現在は農場経営の傍ら、日伯協力による第三国援助計画、日伯間アグリビジネス、デカセギ者帰国後ケアなどに携わる。75歳。