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我が子より先に友人の子=ヘリの救助隊員の手に渡す=「僕も将来は警官に!」

ニッケイ新聞 2009年12月19日付け

 16日にサンパウロ州を襲った雨は、死者7人など、大きな爪痕を残したが、サンパウロ市北部ピリトゥーバでのヘリコプターによる救助活動中、感動の物語が展開されたことを18日付アゴーラ紙が報じた。
 16日の豪雨については17、18日伯字紙も報じているが、アゴーラ紙が取り上げたのは、ヘリ救助の際、主婦のロジレーネ・ダ・パイション・ケリーノさんがとった愛と勇気の行動。
 16日18時半のピリトゥーバ地区は、急に増水した川の水が大人の胸の高さに及んでいた。
 そこにやってきたのが軍警のヘリ。軍警1人が入ったかごがロープで下ろされてきたのを見たロジレーネさんが、最初に救助隊員の手に渡したのは、5歳と8歳の我が子ではなく、隣人のジョジレーネ・シウヴァ・トラジャノさんの3歳と7歳の男児達だった。
 「だって、(裸で裸足だった3歳のアドリアン君が)絶望して泣き叫んでいたんだもの」というロジレーネさん。それに引き換え、自分の子供は自分の兄弟達が抱いていてくれる。ロジレーネさんは、二度考えず、アドリアン君と兄のアレッサンドロ君を軍警の手に託す事にした。
 水の流れが早く風も吹く中、建物などを避けながらの救出作業は困難を極めたが、ロジレーネさんの兄弟の舅(しゅうと)アウフェウ・T・シウヴァさん(67)も手伝い、泣き叫ぶ子供達を軍警のゴーメスさんに渡すと、かごが引き上げられ、安全な場所に運ぶ。
 同じ手順で、ロジレーネさんの子供2人と、アウフェウさん夫妻も救助されたが、子供達がいかに危険な状態にいたかと考えると涙が出るというロジレーネさん。持ち物はみなだめになり、この先どうしていいかわからないが「子供達が無事で何より」と語っている。
 救助隊員らは、17日にロジレーネさん一家を訪問したが、誰かの命を救う事が出来たという満足感と、救われた人達の笑顔が、日々の疲れを癒し、新しい力を与えてくれるという。
 最初に救出されたアレッサンドロ君が、かごの中のゴーメスさんに、「ありがとう! 大きくなったら僕も警官になるよ」と言った言葉も、大きな勲章に違いない。

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