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9歳の子の声は届かない=セアン君を巡る伯米の確執=最高裁長官が米国行き判決

ニッケイ新聞 2009年12月24日付け

 【既報関連】04年から争われていたセアン・ゴールドマン君の養育権問題で、最高裁長官が22日、少年を実父に引き渡すよう判決を下した。
 17、18、23日付伯字紙によると、16日付リオ連邦裁判所の実父ディヴィッド・ゴールドマン氏の養育権承認判決後、母方の祖母からの訴えで、マルコ・A・メロ最高裁判事が、2月までセアン君をブラジルに留め、本人の意思を確認すべきとした17日付暫定判決を覆すものだ。
 暫定判決で安堵したセアン君や母方親族には冷酷な内容だが、これは政府の意向を汲む連邦総弁護庁とゴールドマン氏によるセアン君の安全確保への訴えを受けたもの。
 長官は、判決は「父親や母親の了解無く国外に連れ出された子供は、直ちに居住していた国に送り返されるべきとの『子供の奪取に関するハーグ条約』に基づいた判断」と説明。また、本人の意思確認については、「少年はこの件に関して言及できる程成熟してない」とし、セアン君が誰と暮らしたいかを選ぶ事は出来ないとした。
 事の経緯は3月13日付本紙既報だが、米国に渡ったブルーナ・ビアンシさんと米国人のディヴィッド・ゴールドマン氏の長男であるセアン君の養育権争いは、04年に始まった。
 父親の同意を得てセアン君と帰伯したブルーナさんが、米国に戻らず、離婚に同意しなければ子供には会わせないと言い出したため。ブルーナさんと両親を誘拐罪で訴えた訴訟は15万ドルで取下げられたが、セアン君返還要求は継続。
 ブラジルで再婚したブルーナさんが08年、ジョアン・パウロ氏との長女出産直後に死亡し、実父と養父間の養育権問題は、米国議会や政府高官も絡む政治問題に発展した。
 17日の暫定判決後、米国ではブラジルからの輸入品への免税更新拒否の動きも出、セアン君の祖母がルーラ大統領に送った手紙は効を奏さなかった様だが、9歳児の発言権を拒否し、同僚の判決も覆した最高裁長官の判決は、司法の安定性を揺るがしたとする声もある。
 母亡き後、生まれたばかりの妹の成長や養父や祖父母達との暮しから慰めと力を得ていた少年の生活は、24日9時までの引渡し命令で根底から覆されようとしている。