ニッケイ新聞 2009年12月25日付け
「いい加減にしろっていうのよ、あのスケベ親父! 頭に来たから、ぶん殴ってやったわよ」。そう怒りをぶちまけるのは、サンパウロ市リベルダーデ区でカラオケ店「Z」を経営する日系三世の美人ママSさん。店内で酔客に常軌を逸したセクハラ行為をされた、というのがその理由だが、それが某学校の日本人校長だというから呆れる。「あんなのが教育者なんて、信じられない!」。はてさて、何があったのか――。
11月中旬。カラオケ「Z」の店内は、10人ほどの客で賑わっていた。日付けが変わろうとしていた頃、G校長が3人を伴い、店に現れたという。
「1カ月に一度ぐらいのお客さんですよ。そんなに酔っている様子はなかったんですけどね」
あいさつを済ませ、お客の対応に立ち回っていたが一息つき、G校長の横に座ったSママ。その瞬間、悲鳴を上げて立ち上がった。
手の平を上にした形で数本の指を卑猥(ひわい)に動かしながら、「デヘヘ。気持ちいい?」とだらしないニヤケ顔のG校長。頭のなかでブチッと何かが切れた。
しかし、さすがはホステスの教育にも厳しいと噂のSママ、「ちょっといいですか?」と丁寧に一声掛けた上で、一発強烈なビンタをお見舞い。
しかし反省の色を全く見せず、「何するんだよ、お前?」と凄む姿に、収めようとしていた怒りは、さらに燃え上がった。
「本当に知りたいの?」。そう言うや否や、毟(むし)り取った眼鏡を投げ捨て、立ったままの態勢で、顔面を30発近く殴り続けた。
この修羅場に、周りが騒然としたかというと、そうでもない。G校長の連れはカラオケを熱唱していたため気がつかず、席に座っていた一人は「あっ、怒ってる」とぼんやりと眺めていたという。
「ムイト・ベン!(よくやった)」と喝采を送ったのは、臨席の常連客。「ああいうのは、殴った方がいいんだよ」と頷き顔を見せた。
このG校長、毎晩のようにリベルダーデの酒場を飲み歩いているが、評判が芳しくない。教育に携わる人間らしからぬ酒を飲むというのがもっぱらの噂なのだ。
何度か酒席をともにしたことがあるという40代の女性は、「飲みすぎだし、絡み酒。姿を見たら、逃げるって感じかな」と手厳しい。
「これが最初じゃないんですよ。もう何度もこういうことがあって。彼の友達がいい人だから、我慢してたけど…もう限界だった」(Sママ)。
G校長に事実確認をすると、「冗談冗談、ブリンカデイラですよ」と笑って誤魔化そうとしたが、次第にトーンダウン、「酔っていて、全く覚えていない。叩かれたとは思っていないし、眼鏡は壊れていたので直しました」とか。
忘年会シーズンもそろそろ終わりだが、お酒のマナーには十分気をつけたいものだ。