ニッケイ新聞 2010年1月6日付け
【信濃毎日新聞】日本に住むブラジル人やブラジル在住の日本人が両国で公的年金の加入年数を通算できるようにする「社会保障協定」の締結に向け、両国が2010年1月中にも政府間交渉に入ることが12月30日、分かった。長野県内などで働いた日系ブラジル人が不況のあおりで仕事を失い帰国した際、日本で支払った年金保険料が「掛け捨て」になってしまう問題が深刻化している。順調に進めば同年中に調印、その後、発効する見通しだ。
今年7月まで6年間、上伊那郡箕輪町などで働き帰国した日系二世の深瀬清さん(58)=サンパウロ州マリリア市=は「私も日本で保険料を払っていたが、協定が締結されれば、掛け捨てではなくなり、仲間が両国を行き来しやすくなる。早く締結してほしい」と話している。
日本で外国人登録して長期滞在する外国人は、日本人と同様、国民年金や厚生年金への加入が義務づけられており、将来、年金を受け取るには掛け金を25年間払い続ける必要がある。
だが、日本と社会保障協定を結んでいないブラジル国籍の日系人は、25年未満で帰国すると、日本で支払ってきた年金保険料の一部が「脱退一時金」として返金されるものの、日本での加入年数は通算されない。将来の年金支給額が目減りしてしまうため、対象者から「事実上の掛け捨てだ」との批判が出ている。
脱退一時金の請求は、帰国後2年以内に限られる。このため、ブラジル・サンパウロ市の日系人支援団体によると、長野県内などで働いて帰国したものの、当座をしのぐために一時金を受給するべきか、社会保障協定締結を待つかで悩む人からの相談が急増している。
日本、ブラジル両政府は08年に事務レベルの作業部会を設置し、協定締結が可能か研究を開始。日系ブラジル人の帰国急増などを受け、09年7月、麻生太郎首相(当時)=日ブラジル会議員連盟会長=とブラジルのルーラ大統領は協定締結に向け交渉に入ることを確認していた。