ニッケイ新聞 2010年1月14日付け
鳩山新政権による業務仕分けなどの政府支出削減の影響で、JATAK(全国拓植農業協同組合連合会、本部=東京、大久保鉄夫代表理事会長)のブラジル事業所である農業技術普及交流センターが厳しい状況に立たされそうな可能性がある。今までも年々業務が縮小されていたが、同農業技術普及交流センターの広瀬哲洋所長(61、三重)は「本部で大事な決定がなされている。2週間後ぐらいには通達がくるかもしれない。今まで通りかもしれないし、場合によっては半額ということもありえる」と心配し、大きな節目にあることを伺わせた。
昨年10月にサンパウロ事務所を閉鎖し、業務はグアタパラの農業技術普及交流センターに引き継がれた。サンパウロ事務所の所長だった馬場光男氏も昨年3月に定年退職し、後任は採用されず、事実上、業務縮小が行われてきた。
馬場元所長は「サンパウロの事務所の業務はグアタパラのセンターに引き継いだ。今までも毎年10%ぐらいずつ日本からの予算も減らされていた。今回どうなるか注目している。厳しいとは思うが…」という。
広瀬所長も「ここは公益団体なので営利活動ができず、活動費用のほとんどは本部からの送金に頼っている」という。本部の資金は農林水産省の予算からであり、そこへ事業仕分けのしわ寄せが予想される。
JATAKは1956年12月に、農業者の海外移住を援護・促進して、農村の生活及び文化の向上に寄与することを目的に設立され、以来、農業移住事業に貢献してきた。66年にはグアタパラにブラジル農業拓植青年訓練所を設置、2001年からは農業技術普及交流センターとして活用してきた。
今までの主な活動は次の3点。(1)92年から日系若手農業者の日本研修送り出しを行い、最盛期で年間30人を送っていたが、現在は4~6人となっている。(2)日本から専門家を年間2人(1カ月程度)を本部から派遣。(3)巡回農業指導を行ってきた。
広瀬所長は「政権は変わっても、日本が食料の60%を輸入する状況は変わらない。日系農業支援を通して、南米からのそれを確保するお手伝いは今後も重要なはず。実際、中国が大量に大豆を買い付けており、日本分の安定確保の問題になりかねない。4月から新しい事業を始める検討もされている」と必死に生き残り策を模索している様子を見せた。