ニッケイ新聞 2010年1月16日付け
人権擁護国家計画の大統領令が発効することで関係団体多数が14日、大統領府サンパウロ州支部へ抗議文書や支援文書を提出と15日付けエスタード紙が報じた。
人権団体や労働組合は、同令を骨抜きにしたジョビン国防相とMST(農地占拠運動)活動家の人権擁護を批判したステファネス農相の解任を求めた。支援文書では、弱者の基本的人権が、初めて国家によって認められた大切な一歩だという。
支援文書には、孤軍奮闘したヴァヌッシ人権相の功績を称えるものが多い。CUT(中央労組)や犠牲者遺族協会などの支援者は大統領府サンパウロ州支部前に集合し、人権擁護は民主主義の一環であるとする声明を発表した。
同大統領令に内外から意外な反響があったことで、ルーラ大統領は14日、人権擁護計画の条文修正にはこれ以上応じないと側近に洩らした。宗教界からは中絶と同性愛者の婚姻で異議を申し立てられた。
他に、報道界から報道規制を批判され、農業生産者が農地改革について異論をとなえた。しかし、最大の山場は特赦法の見直しであったと、大統領府は見ている。
ルーラ大統領がジョビン国防相の進言に譲歩、条文を修正した。それで人権相と官房長官、法相国防相で組織する真相究明委員会の結成案作成で決着することにした。ルーラ大統領は、これで軍政時代の問題は一件落着と理解したようだ。
MSTによる農地解放前の農場占拠について、大統領の見解を質した農相は、債務決済を滞納している生産者の農地に関する大統領令の条文是非については、発言を控えた。大統領府は期限切れの債務残高を、農地解放の対象として地主と取引する考えのようだ。
一方、農業生産者同盟(UDR)は、MSTの農地占拠に対し徹底抗戦の構えを見せている。例え人権に関する大統領令であっても、警備企業に武装した警備員の配置を要請し、解放前の農地占拠を違法行為として撃退するという。