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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年1月20日付け

 今回のハイチ地震では「国とは何か」を考えさせられる。「ハイチの本当の〃地震〃は歴史そのものを直撃しており、地学的な揺れによってそれが世界的に明らかになっただけ」。詩人レジス・ボンヴィシノ氏は15日付けウルチモ・セグンドサイトで、そう現状をコメントする。南北米大陸では米国の次、1804年に独立したという輝かしい経歴を誇りながら「ラ米最貧国」に成り下がってしまった歴史のことだ。ブラジル独立より18年も早い▼18日付けユーロニュースは、セネガルのワッド大統領が、ハイチ難民を収容してアフリカ大陸に新国家を建設する提案をした件を報じた。「本人の意志に反してアメリカに送られたものたちの子孫であり、リベリアのような先例もある」と。リベリアは1820年に米国の黒人解放奴隷が「祖国再建運動」として始め、1847年に実際に独立し、アフリカ大陸ではエチオピアに次いで古い国家になった。しかし、そう簡単に国家が作れるものなのか▼一方、グローボサイトでは国際通貨基金勤務のブラジル人経済評論家イリネウ・カルバーリョ・フィーリョ氏は「難民10万人ならブラジルで丸ごと引き受けたらいい」と論ずる。日本移民は全部で25万人だった。「1895年だけでモッカ区の移民収容所を10万5千人の外国人が通った。今のブラジル2億人のうち10万人など大海の一滴に等しい」と雄々しい声があるが、果たしてそうか▼正直言って、今のハイチは国家として機能していないように見える。しかし、現行の世界体制の中では国家は独立こそしても、戦争以外で消滅した例はないだろう。一体どうなるのか。(深)