ニッケイ新聞 2010年1月21日付け
国連貿易開発会議(Unctad)は19日、世界的に外資による直接投資が08年比39%減と低調であった中、ブラジルの場合はそれを上回る49・5%の激減と発表したことを20日付けフォーリャ紙などが報じた。同会議によれば直接投資の落ち込みが、6年にわたった新興国の躍進に歯止めをかけ、10年に僅かながら回復の兆を期待するとしている。サンパウロ州工業界は09年、9万8千人を解雇。雇用の減少は、08年の4・32%減となったことを明らかにした。
同会議による金融危機の影響調査結果が19日、発表された。09年の全世界での外資による直接投資額は08年の1兆7千億ドル(07年比14%減)に対し、1兆ドル超だった。
新興国ではマレーシアの66・6%減を筆頭にトルコ56・3%減、タイ54・3%減、ブラジルの順。中国は僅か2・6%減。先進国では英国の92・7%減、米国が57%減(ただし、投資総額は1359億ドルで依然世界1位)など。
10年には回復の兆が期待されても、脆弱であることは否めない。それは先進国政府の応急措置が、一時的な刺激策に過ぎなかったからだ。それでも危機の衝撃は、全般ではなく地域であるから救われるという。
BRICs諸国では、中国が2・6%減の900億ドルの投資を受け、投資額での世界2位。国際経済のけん引役を果たした。ブラジルへの投資は、9位だった08年の451億ドルから228億ドルに減り、12位に降格。ロシアは41%減の414億ドルで4位、インドは19%減の336億ドルで9位だ。
しかし、これは投資環境の悪化ではないと、同会議が慰めた。ブラジルへの直接投資が減ったのは、投資保留だという。多国籍企業は傘下企業や系列企業を売却し、新しい地域への進出を狙っている。手持ち資金を散らさないで、新事業へ集中投資する考えだ。
米多国籍がブラジル工場を10億ドルで売却すると、直接投資が10億ドル減になる。だから取り立てて騒ぐことではないと、同会議はいう。ブラジルが有望市場か否かは、ブラジル国民の肩にかかるとしている。
ブラジルへの直接投資傾向は台風一過後、一次産品か二次産品かも影響している。特に原料産出国には、情勢が有利に動いている。ブラジル経済は、危機を見事泳ぎぬけた。既に資本投下したものは、投下を継続。
中国は資本投下に魅力ある国だ。中国はこれまで、加工基地であった。それが今、サービス基地へ変身。単純職種産業から多種分野産業へ脱皮している。時代の要求に合わせる変容を、ブラジルも見習う必要があると同会議が提言する。