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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年1月21日付け

 短いが心にしみる読者(河合茂行さん)からのメールを頂いた。「戦前移民はコロノ生活で永い間田舎で暮らし。日本で小学校も半端なまま、ここで日本語を習った者もどれだけ居ることでしょう。今までブラジルで発行される日本語新聞も読み、日本語を不自由なしと自分では思いながらやってきた。でも今、私の周りには『日本語が読めるように成ったと話題になっている』と仮名振りのニッケイ新聞を褒めている友人がいます」▼幼少で渡伯して独学で日本語を学んだ戦前移民や、植民地の環境から日本語学校に満足に行けなかった二世もいる。邦字紙を購読しながらも漢字を読みこなしていた訳ではなく、歯がゆい思いをしながら、じっと紙面を眺めてきた読者がいるのだと痛感した▼両親が一世なら家庭内では日本語のみ。そんな環境で子供時代を過ごした二世にとって、日本語は人格形成した大事な母語だ。しかし、小学校に通いはじめると、周りの生徒に比べてポ語が弱いので、先生から「家の中で日本語を使うな」と注意されるなど一種のトラウマ(精神的な傷)になっていたと想像される。「しゃべれるけど読めない」という状態は、まっとうな成人にとって精神衛生上よくない▼現役の日本語教師ですら邦字紙を読めない人がいる現状を思えば、新聞レベルの読解力を独学するのは大変だったはず。それだけ努力しても難しい熟語は無尽蔵にある▼振り仮名があれば、しゃべっている人が読めるようになる。あとは単語を増やすだけ。一日でも長くコロニアに日本語が残るよう、読者の周りにいるそんな人たちに、ぜひルビ付き紙面を教えて欲しい。(深)