コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年1月23日付け

 世界の空を飛びかっていた日航が破綻した。2兆3千億円もの借金に堪えかねての破産であり、その昔―尾翼に輝いていた鶴のマークも泣くに泣けまい。株券は1円にもならない紙っ切れ。泣いて馬謖(ばしょく)を斬るのはいいとしても、何の罪もない株主らの怒りはいかばかりかー。しかも、取引銀行からと他の金融筋を含めた7千5百億円の融資を棒引きにしてもらっての再建でありこの倒産は哀しくも寂しい▼西松社長ら経営陣は引責辞任し、稲盛和夫・京セラ会長が新しい会長になるが、新日航の旅立ちは険しい。5万人の従業員のうち1万5千人を解雇。国内と国際線を大幅に削減し3年後には黒字にするの計画だが、これは至難と言っていい。85年のジャンボ墜落後に鐘紡の伊藤淳二会長が請われて会長に就任したが,旧幹部らの抵抗が強く2年で退職している。これほどに「空飛ぶ会社」の経営は難しい▼日航崩壊は、政治と官僚の癒着が原因と見ていい。多くの地域に空港を造り、政官の圧力で日航に就航を求める。これは採算度外視の強行策であり、「鶴の翼」は赤字航行を続けていた。今、日本には99の空港があり、各都道府県に2つの空港がある計算になり、黒字は新千歳と大阪(伊丹)などだけだそうな。ある人は「国家がらみの犯罪」と評したけれども、とても痛烈ないい批判である▼しかも、これから政府系機関が6千億円の融資を決め、企業再生支援機構は3千億円の出資をするが、戦後最大の倒産劇を演じた新日航が、これらをうまく活用し、是非―3年後の決算には黒字をとーお願いしたい。(遯)