ニッケイ新聞 2010年1月28日付け
母が日本人、父が台湾人の日系下議ウイリアン・ウー氏(二世、41、PPS=社会大衆党)は今年10月の連邦選挙に、日系初の上院議席を選挙戦で争う決心をし、準備を進めていることを報告に27日午前来社し、「少なくとも400万票を期待している。コムニダーデの存在が他候補との違いを作る。百周年の盛り上がりを、不祥事が続く上院の改革につなげたい」との抱負を語った。前日に報じた麻州の柳井ジョルジ氏の上議就任は繰り上げであり、日系人が正式に上議選挙に立候補するのは今回が初めて。
00年、サンパウロ市で最年少市議として当選したのを皮切りに、04年に再当選、06年に連邦下議に初当選という最短の経歴をたどり、今回、日系初の上院当選を目指す。最初からPSDB(ブラジル民主社会党)に属していたが、上院立候補を目指したことから09年10月に離党し、連係関係にあるPPSに移った。しかし、党移籍に絡んで議員忠義を問う裁判が係争中だが、「10月までに結論がでる」という。
上院立候補を決意した理由として次の3点を挙げた。(1)今ほどの不祥事が上院で続いたことはない、(2)サンパウロ州は〃ブラジルの機関車〃だが、年々PIB(国内総生産)の州別比率が下がっており、このまま放っておけない。リオサンパウロ市間の高速鉄道はもちろん、空軍戦闘機購入、環状道路(ロドアネル)、洪水対策などでサンパウロ州の重みにふさわしい役割を果たす、(3)日本移民百周年の時ほど全伯で盛大に祝われた民族系コムニダーデは他にない。連邦下議では他日系候補との競合がどうしても生まれるが、上議ならそれがない。
09年にはPSDBの党副リーダーとして、組織犯罪撲滅・公安委員会の副会長なども歴任したが、それらの役職をなげうって、上議立候補を可能にするために小党に移籍した。前党は100万単位の党員を誇る巨大政党だが、PPSは30万程度の中堅政党。
サンパウロ市議の間に最多可決法案数を誇り、連邦議会でも特赦(アネスチア)法、個人番号統一法の二つを可決させた。特に同統一法は今まで州単位で管轄していた年金、RG(イデンチダーデ)、労働手帳などの番号を全伯で統一するもので、犯罪者の州越え逃亡を困難にし、年金不正受給などの防止にも効果があるとされている。
今回当選すれば2011年1月に就任し、任期は2019年まで。その間、サッカーW杯、リオ五輪という国家的イベントが目白押し。「ブラジルの歴史にとって、この期間ほど重要な期間はない。この貴重な時に日系上議として立ち会わせることは重大な意味がある」と強調する。
今年サンパウロ州では600万人の新有権者が生まれる。「おそらく今回の選挙では有力候補が乱立し、票が分散する。それでも最低400万票は必要」と状況を予測する。
各州で3上議枠があるうち、今回はメルカダンテ氏(PT)とロメウ・ツーマ氏(DEM)の2席分が任期切れとなる。予測される現職の再立候補に加え、ネッチーニョ・デ・パウラ(サンパウロ市議、元人気歌手)、パウロ・スカフィ(サンパウロ州工業連盟会長)、オレスチス・クエルシア(元サンパウロ州知事、PMDB)などが取りざたされている。
「選挙は開票するまで分からない。大統領候選がセーラ、ジウマなのか、サンパウロ州知事選に誰が出るのかによって事態は流動化する。いずれにせよ、今回ほど上院のあり方が問われ、清新なイメージが有権者から求められる選挙はない。難しいのは百も承知、でも今をのぞいて好機はない。コムニダーデを挙げて協力をお願いしたい」と力を込める。
現段階はプレ候補であり、正式な立候補は6月末に予定される党大会で決められる。「できればいつかは大統領に、それがだめでも将来は閣僚の一角を支えるようになりたい」との熱い抱負を語った。