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チリは明日のブラジル?=「国民は変化を求む」=PTとPSDBは酷似=右派台頭の可能性も大

ニッケイ新聞 2010年2月2日付け

 チリのバチェレット左派政権が国民から81%の評価を受けながら、大統領選では接戦の末破れ、ピニェラ右派政権の誕生が決まったことは、ブラジルにとって何を意味するかと2月1日付けジアリオ・ド・コメルシオ紙が報じた。次期大統領選で熱戦が予想されるセーラサンパウロ州知事(PSDB=民主社会党)とロウセフ官房長官(PT=労働者党)はともに中道左派。ブラジルは過去16年、PTとPSDBが政権の御鉢を回しただけだとカンピーナス大学政治学科のマルコス・ノブレ教授が指摘した。

 ブラジルで現在起きていることは、先のチリ大統領選での「今日のチリは、明日のブラジル」という先例とよく似ていると同教授はいう。チリ国民は変化を求めたのに、与党は現状維持を掲げた。その辺、チリとブラジルは酷似しているというのだ。
 「ゴーメス下議(PSB=社会党)とネーヴェス知事(PSDB)は、夫々PTとPSDBを割り、国民の求める変化を訴えようとしている。両人は野望を訴えたのではなく、マンネリ化する両党に覚醒を促したのだ」と同教授が見ている。
 ブラジル国民はFHC前政権時代から政府に開拓精神と減税政策、公営化阻止を求めていた。これは軍政の名残でも反共主義でもなく、中道右派の新しい潮流だ。
 ラテン・アメリカでは軍政を終焉する条件として社会協約が結ばれた。ブラジルでは、レアル・プランがそれだ。それまで民主制では頼りになる政権がなかった。絶対多数の得票によりサルネイPMDB政権が誕生したが、コーロル政権誕生の原因になった。
 チリ中道左派の中心コンセルタシオン(改革党)は、党内の分裂により独自色が薄れた。これは、ブラジルにもいえる。セーラとロウセフは、どんな旗色を以って区別するかが選挙たけなわに問題となる。
 現在は前哨戦で、ただの石の投げ合いだ。両者とも手の内は、見せていない。似たような中道左派の二人が、騒いでいるだけ。ここへ突然、鮮明な旗を掲げた中道右派が現れる可能性がある。
 ネーヴェス知事やゴーメス下議、マリーナ上議(PV=緑の党)が、国民が潜在的に願っている発展への変化を打ち出せるなら、第3の道が開かれるというのだ。
 ブラジルにおける選挙の特徴は、右にも左にも門戸が開かれていること。しかも、次期大統領は、W杯サッカーと五輪という大事業を抱え、成功すれば歴史に名を残す栄誉がある。