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行き場失い路上に戻る?=貧困者用施設閉じるサンパウロ市=社会福祉後退の声出るも

ニッケイ新聞 2010年2月5日付け

 サンパウロ市セントロ改造を掲げるカサビ市長のもと、同地域での貧困者用種宿泊施設(アウベルゲ)閉鎖が続き、わずか2年で1千人以上が行き場を失う事になると4日付エスタード紙が報じた。
 セントロ改造は現市政にとっての重要案件の一つだが、セントロのアウベルゲ閉鎖は、同施設を唯一の宿泊の場、食事が出来、入浴出来る場としていた人達にとり、社会復帰の機会喪失なども含め、深刻な問題だ。
 09年12月のサイト記事には、「既に6つ、4千人が行き場を失ったアウベルゲ閉鎖は社会福祉の後退で、セントロでの細々とした仕事で日銭を稼ぐ人達を郊外に移そうとするのは間違い」と指摘する議員の声も出ているが、現実には、別の施設に移ろうにも、郊外も含め空きがないのが実情。セントロ浄化の掛け声とは裏腹に、路上生活者増加にも及んでいる。
 08年のアウベルゲ・シリネウ閉鎖後にアウベルゲ・サンフランシスコに移ったが、そこも閉鎖され、ミニョコンに舞い戻って寝泊りしているカルロス・ドス・サントスさんもその1例だ。
 シリネウは400人、サンフランシスコは300人収容の施設だったが、後者には一時700人以上が身を寄せていたともいわれ、85人収容のレプブリカ・コンドミニオと同400人のペドローゾも年内閉鎖が通告されている。
 利用者は月60レアルで浴室付きの部屋一つを利用できるレプブリカ・コンドミニオは3月末日閉鎖予定で、麻薬常用からやっと抜け出し、職探し中のアントニオ・ソウザさんや、子供3人を連れて路上生活に戻る事になるのかと絶望する料理人のジウダ・ドス・アンジョスさんの様に、家族共々路頭に迷う可能性がある人々もいる。
 ノヴァ・ルス計画に伴う麻薬密売者や常用者一掃計画では、地区の密売者らが周辺部に拡散したが、エスタード紙では、郊外は仕事もなく危険な上、医療も十分受けられないとの声や、パウリスタ地区も含むセントロで路上生活者増加の実態も報告。セントロの路上生活者は2千人、市内全域では7年で5千人増え1万5千人といわれる中、サンパウロ市では社会福祉後退色が益々強まりそうだ。