ニッケイ新聞 2010年2月6日付け
経済評論家のアウベルト・タメル氏が3日、1月の貿易赤字が1億6600万ドルに留まったのは、原油が偶然144%も高騰し、ペトロブラスが例年の20%増の10億ドルを偶々輸出したためであったと分析したことを4日付けエスタード紙が報じた。
同氏は、貿易赤字がこの程度で推移すると思ってはいけないと警告。ペトロブラスは、いつも石油製品を輸入する。石油だけの貿易収支ではまだ入超だから、1月のような収支がいつも期待できるわけではない。
経済成長が進行するなら、石油消費も増える。農作物の収獲が始まれば、石油消費は激増。金融危機後は、貿易黒字の兆候が見えない。フルラン前産業開発相時代の400億ドルの黒字が、懐かしい昔話となった。
悲観的見方だが、経済は特別対策を講じていないのに成長し、輸出も少しずつ増えている。資材は国内調達より輸入した方が安く、インフレも抑えられる。だが、経済は赤字体質になっている。
同氏によれば、ジョルジェ産業開発相はよくやっているが、財務省と国税庁が輸出へ税制恩典を許さないので多くは期待できない。輸出品を船積みした輸出業者はクレジットを受け取れる権利があるのに、支払を受けるまで6年もかかる税制クレジット問題も、同相が散々苦言を呈しても解決していない。
新興国の中で税金を納めるのは、ブラジルだけ。他の新興国は奨励金が出る。2国間自由貿易協定はイスラエルとの間だけ締結され、他の国は交渉停止。外務省の無気力がなせる業だという。
アモリン外相が、ドーハ・ラウンドという夢から覚めないのも問題で、ラテン・アメリカ諸国は欧米市場にみぎりをつけたのに、ブラジルだけはモタモタしている。これは輸出奨励ではなく、輸出いじめだという。
金融危機が工業分野に与えた打撃と貿易赤字の現実を、大統領によく説明すべきだ。現状を放置するなら、貿易赤字は増えるばかり。これはブラジルの将来に深刻な事態をもたらす。経常収支が赤字でなければ、財務省は涼しい顔だ。
貿易でドルが取得できないなら、流入外資に頼るしかない。対外収支も既に下り坂になっている。流入外資の殆どは、浮気な投機資金で、本腰を入れた直接投資ではない。過去の通貨危機は、みんな浮気資金に泣かされたものだという。