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60周年迎えるぶらじる川柳社=柿嶋貞子主幹が引退=全伯に愛好者110人=荒井花生さんが後任に

ニッケイ新聞 2010年2月6日付け

 全伯に約10社ある川柳支部吟社の〃総本山〃「ぶらじる川柳社」をまとめてきた女流主幹の柿嶋貞子さん(柳名・さだ子、80、アリアンサ出身)が昨年、5年間の大役を果たして勇退、今年度から荒井花生さんが新主幹に就いた。1950年に創立した同社は、コロニア文芸結社の中でも最古のうちの一つといえる。一世の減少は免れない状況だが、二世の愛好家も多く、現在、全伯に百数十人を数える。自身が所属する支部吟社のサンパウロ新生吟社の主幹は今後も務めるものの、「やっと後継者に引き継げる」とほっとした表情をみせる柿嶋さんにインタビューした。

 ぶらじる川柳社が11人の同人と堀田栄光花主宰のもとに産声をあげた60年前の同じ年に、早くも川柳愛好家の広がりは、サンパウロ新生吟社の創立となって形に表れている。
 新生吟社の創立句会がが行われた場所は、日伯毎日新聞社(ニッケイ新聞の前身)の事務所。当時あった新聞の柳壇欄でなじみの顔ぶれや、パウリスタ新聞社に務めていた岡本さとほろ、鈴蘭(いずれも柳名)夫妻が創立メンバーだった。
 ぶらじる川柳社が発行した合同句集「移民百周年記念句集」によれば、昨年500号を迎えた新生吟社の月報紙は、「新聞社からでる余分の紙を活用して、謄写版刷りの句会成績を発表した」のが始まりだ。
 柿嶋さんがこの道を本格的に歩みだしたのは、同新聞社主催の全伯大会に知人に誘われて出席したのがきっかけ。
 アリアンサ生まれの二世で、自宅で日本語教室を開いていたものの、40代に入るまで川柳とは無縁だった。大先輩らに「一世に伍していくのは大変ですよ、頑張ってください」と励まされたことを昔のことのように覚えている。
 「それまで川柳って皮肉というイメージが強くて近寄りがたかった」というが、「深さがあるんだなぁって。今まで考えていた川柳と全然違ったんですね。この自由さは他の文芸にない魅力です」と語る。
 「百薬に勝る極上の冷ビール」。柿嶋さんののびのびとした豪快な切り口の川柳は、人の心を和やかにさせ、元気にさせる魅力がある。
 インタビューした1月12日は、柿嶋さんが講師を務める老人クラブ連合会の川柳教室の初句会だった。限られた時間内で一生懸命読む姿は、89歳の〃新人〃からベテランまで真剣そのもの。「感性が大事ですよ、難しく考えないで、自分の気持ちを素直に読めば良いのよ」と指導する。
 今年創立73年を迎えるコロニア最古の文芸結社とされる短歌の椰子樹と大差なく、脈々とブラジル川柳の灯が守られてきた。「くしの歯が欠けるように、仲間が少なくなってきている。だけど川柳のよさを一人でも多くの人に伝えて、ブラジルでの60年の歴史を絶やさないで欲しい」
 自身の高齢を理由に、「ここ数年は後継者に譲りたいと思っていた」という柿嶋さんは、ほっとした表情を見せつつ、「今年は創立60周年。記念句集を出せたらいいですね。もちろん協力するつもりです」と張り切っていた。