ニッケイ新聞 2010年2月9日付け
バイア州水・気候管理局(INGAC)は、バイア州カエチテー市にある核開発公団(INB)のウラン加工場近くにある井戸から、許容量の47倍に当たる放射能が検出されたことを確認、09年11月からだけで9つの井戸を封印したと7日付けフォーリャ紙が報じた。ブラジルで唯一のウラン加工場で放射能漏れが起きたのは、3カ月以上前からと推定される。井戸が封印されたことで、飲み水や農業用水にも事欠き、放射能漏れを防ぐ具体的処置がとられていないことを知った市民4万6千人の間には、不安と反発が広がっている。ウランの採取加工は漏洩が確認されれば、工場閉鎖の可能性もある。
同ウラン加工場は、アングラ・ドス・レイス原発で使う核燃料の原料を採取加工している。核開発公団は、人体に影響がないとする州関連機関の鑑定書を作成の上、異議申し立てを行う意向。
放射能漏れが発見され、最初に井戸の封鎖が起きたのは08年末だが、09年11月から1月22日までに、9つの井戸が新たに封鎖されている。井戸に水使用禁止の封印をするとともに、家畜の給水、農作物へのかんがいも禁じた。
ウラン加工場から20キロ以内を危険区域と見なし、そこに居住する3千世帯は、市から飲料用と炊事用の水を供給されることになった。INGACは08年から水質検査を行っていたという。
08年の放射能漏れ発見以降、白血病や癌発病を恐れていた同市市民は、INGACによる井戸封鎖に反発を強めており、政府の核開発計画にも影響は必至だ。Ipen(核エネルギー研究所)は、許容量の47倍という検出書の真偽を調べると発表した。
INBは、過去10年の操業中、許容量以上の放射能漏れは、これまで皆無と発表。INGACが高度の放射能漏れを検出したのは、同地域のウラン埋蔵量が膨大だからで、公団の怠慢を指摘するのは不当と抗議。
同工場は年400トンの6ふっ化ウラン(イエローケーキ)を生産しているが、放射能漏れが確認されると、工場が閉鎖される可能性がある。
一方、INBが契約している調査機関は、同市では、腫瘍や先天性奇形などの問題も起きているが、市民が病気になった場合、放射能が原因か否かの判定には5年を要するという。ブラジルでは死因の多くが呼吸器系疾患、続いて血液系。しかし、同市では3人に1人が原因不明の疾患による死亡となっている。