高速鉄道に中国も名乗り=価格低下を期待するブラジル=安全・安定性は大丈夫?
ニッケイ新聞 2010年2月9日付け
リオ市からサンパウロ市、カンピーナス市を結ぶ、ブラジル初の高速鉄道(TAV)の入札公示が近いが、7日付エスタード紙が、中国もTAV入札に参加の意向を固めたと報じた。
国会議員や社会開発銀行関係者ら6人が、中国を訪問し、高速鉄道視察を行ったのは2週間前。ブラジル政府としては、中国の参加で、史上最大のプロジェクトとなるTAVの入札価格が下がる事も期待しての訪問だ。
中国国内の高速鉄道には、09年開通の、武漢と広州を結ぶ「武広高速鉄道」や、05年着工、5日デビューの「鄭西高速鉄道」があるが、高速鉄道部門での中国は、世界でも新規参入組だ。
その一方、世界の注目を集めたのは、総工費170億ドルで建設された全長1068キロの武広高速鉄道が、平均時速313キロを記録したこと。瞬間時速では、フランスTGVが07年に打ち立てた574・8キロに及ばないが、平均速度は、TGVの280キロを上回っている。
一方、全長510・8キロ、総工費346億レアル(約192億ドル)と発表されているブラジルTAVの平均時速希望は、300~350キロ。
中国側では、鉄道省のワン氏らが09年11月に訪伯し、1月22日に北京駐在のブラジル大使とも会談を行った他、入札前に再度訪伯し、建設を担当するブラジル企業とのコンソーシアム構築案などを明確にする予定。
2013年までに世界一の鉄道網構築を計画中の中国は、60年代に新幹線を開業させ2500キロの操業実績を持つ日本や、アルストン社製造のTGVが81年以来2000キロの操業実績を持つフランス、時速430キロを誇るリニアモーターカーを所持するドイツと競合する事となる。
今月中に入札公示、5月には工事などを担当するコンソーシアム決定との計画を立てているブラジル政府は、新鋭中国の参加に期待しているが、武広高速鉄道では、3日と6日の故障発生で運行遅延などのトラブルが起き、5日にデビューした鄭西高速鉄道でも7日に故障発生が報告されるなど、安全や安定運行への不安がないわけではない。
実際の入札実現まで、各国の威信もかけた水面下の交渉が続きそうだ。