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兵庫県=日系労働者凍える日々=解雇や給与減、帰国も…

ニッケイ新聞 2010年2月9日付け

 【神戸新聞】長引く景気の冷え込みが、兵庫県内の工場などで働く日系ブラジル人労働者の生活も直撃している。解雇され、新たな仕事が見つからない人、給料カットで収入が大幅に減りブラジルへの帰国を選ばざるを得ない人もいる。(大月美佳)
 「大企業だからと安心していたのに」。神戸市中央区の日系3世佐藤トシイシさん(26)は嘆く。昨年12月中旬、川崎重工業から業務委託を受けた請負会社を解雇された。同じ職場のブラジル人とペルー人約20人も同時に職を失った。
 2006年から兵庫工場で働く。残業も休日出勤もいとわず月30万~40万を稼いだ。ロシア人の妻(36)と長女(1)を養い、08年にマンションを購入。日本での生活も軌道に乗ったところだった。
 ハローワークで見つけた20~30社に電話したが、外国人を理由に断られた。ようやく面接に応じてくれた2社も、読み書きができないと知り、「即戦力が必要」と採用されなかった。
 住宅ローンと管理費を合わせて月15万円は必要だが、これまで母国へ仕送りしてきたため貯金はない。「最悪の場合は帰国も考えないと。妻がロシア人なので順応できないかもしれない。家族がばらばらになる」
 同市東灘区の日系男性(49)は「日本で働いてもお金がたまらない」と半年後の帰国を決めた。約3年前に来日し、弁当加工場で働く。当時900円だった時給は820円に。休みも週2日に増えた。「今はただ、子どもたちに会いたい」
 「もう辞めようか」と言うのは、ブラジル食材や雑貨をトラックに載せ移動販売する日系2世のシノハラ・ネルソンさん(36)=滋賀県愛知郡。大阪や兵庫県内を回るが、失業者の増加もあり、売り上げは一昨年の約4割に。日系人約50人が働く神戸市内の工場も1月末にも廃止され、貴重な販売拠点を失う。
 「今が一番大変」。品ぞろえを食料品など必需品に絞り、毎日数時間の睡眠でハンドルを握り締める。
     ◎
 大阪入国管理局神戸支局によると、県内のブラジル人は約3697人(2008年12月末現在)で、減少傾向にある。厚生労働省が09年4月から、離職した日系人労働者を対象に支給する帰国支援金を利用し、全国で約1万7500人が帰国したが、今年3月で事業は終了する。