ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年2月11日付け

 中国の古典『通俗編』に「家に賢妻あれば丈夫は横事に遭わず」という一節がある。丈夫は夫、横事は問題、トラブルに巻き込まれることを指す。男は世間の見栄や欲に目をくらまされることも多いが、家庭を守る妻が手綱を引いていれば、大抵のことは避けられることを教える箴言(しんげん)だ。耳の痛いことを言う人材を理事会から排除している文協でいえば、さしずめ妻は評議員会となろう▼しかし―である。文協自らが「ひばりプロダクション」のアゴアシ20万レアル(1000万円)を拠出するという前代未聞の異常事態に、声を大にする評議員はいない。某評議員は「もうさじを投げましたよ…」と諦め顔だ。家庭を顧みず、愛人につぎ込む夫の暴君ぶりに妻も愛想を尽かし、暇を貰いたいようだ▼理事会メンバーの親世代は明治生まれも多かろう。ブラジル生まれの細君には出せない家父長制度のDNAが団体経営に出てくるのはご勘弁。ある小委員会の会員は「理事らは『金がないから。小委員会は独立採算を』っていうけどね。我々はボランティア…やってられないよね」とこぼす。いわば、妾宅に通い、家に金を入れない父親に対する子供の叫びか▼分家コロニアの騒ぎは、本家日本にも届いた。公称70万部を誇る週刊誌『週刊新潮』が取り上げた=本日付7面で詳報=。頃末アンドレ委員長の「来てくださるので、一番のものをプレゼント」が泣かせる。さすがにひばり側も「いっそテープだけ持っていってもらっても…」と及び腰。本宅に乗り込む愛人はいない。今年は文協創立55周年。金婚式を超えているのだから、家庭円満といきたい。(剛)