ニッケイ新聞 2010年2月18日付け
政府と財界は16日、ブラジルをラテン・アメリカの金融センターとすべく、産業活動資金を統合管理するための体制づくりを行い、為替制度や金融制度、税制の改革に取り組む意向を固めたと表明したことを17日付けフォーリャ紙が報じた。同センターが発足すれば、南米諸国の企業はサンパウロ市証券取引所で株式の公開を行い、同取引所を足場に全世界での金融取引が可能となる。ブラジルは金融危機をいち早く克服したことで、世界へ向けて恐慌遊泳術を指南することになりそうだ。
スペインのマドリードや米国マイアミの証券取引所が前例として行っていることを、サンパウロ市でも取り入れ、金融活動のハブ(中枢空港)となる。チリのサンチアゴも同様の計画があったが、一足先にサンパウロ市で実現しそうだ。
同計画は、これまで、ニューヨークやロンドン証券取引所などが資金力にものをいわせ、ブラジル金融界からさらった油揚げを取り返す考えだ。ブラジルの大手企業は現在、ADRs(預託証券)取引ではニューヨーク証券取引所の世話になっている。
政府は長年、国債を国外の金融市場で取引することに抵抗感があった。同国債を購入する国際金融の投資家は、インフレ進行とともに調整される政策金利スライド制を要求するからだ。これをされると国内の金融市場を脆くし、資金調達より資金逃避が大きくなる。
金融センター案は、1年前から財界で計画が秘密裏に練られていた。そこへ財務省や中央銀行、通貨審議会、伯銀、BNDES(社会開発銀行)が便乗したもの。
同案は、コンサルタント会社に依頼して是非を検討、有利な10点を洗い出した。3月25日に委員会を立ち上げ、サンパウロ市証券取引所と銀行協会(Febraban)の音頭で実動開始となる。
先ず変更するのは、営業時間と各国の手数料統一、国外の金融制度に比べ見劣りするシステム、ブラジルだけにしかないIOF(金融税)、国外の金融専門家を招聘するため労働法の改正など。
金融市場の国際化で注意することは、ブラジルがタックス・ヘブンにならないこと。いまだ危機から立ち上がれない先進国の轍を踏まないこと。金融システムの模範となったブラジルの看板を汚さないこと。
コモディティの本場であるシカゴ証券取引所でも、ブラジルは取引量を上げ、注目されるところとなった。コモディティ関係でこれから、大量の資金がブラジルとの間で動くものと予想される。