ニッケイ新聞 2010年2月19日付け
エスタ―ド紙経済欄に毎日執筆している有名な経済コラムニスト、セルソ・ミング氏が12日、ブラジル日本商工会議所の定例昼食会で講演し、「人類の歴史の中でも稀な時期に我々は直面している」などとのべ、産業革命から現代のグローバリゼーションにいたる経済の流れを概観する中で現在の情勢を論じ、「不安材料は多いが、今ほどブラジルで企業が成功する確率の高い時代はない」と投資を薦めた。
「未来の学者は、激変期である現代という時代区分に、なんらかの固有名詞をつけて呼ぶだろう」。世界経済はゆがんでおり、今の小均衡状態は長続きしないと予言。 「借金漬けの米国、供給し続ける中国、この関係は維持できない。早晩ストップする。いずれ、米国は借金体質を止め、輸出して貿易黒字を出すようになる。逆に中国どこかの時点で輸入国に変わるだろう」とし、「その時に何が起こるか分からない。世界各国は痛みの伴う政策をとらざる得なくなる」という。
「地政学的な世界の中軸は西洋から東洋に移りつつある」と分析。東洋の中でも日本、中国、インド、東南アジア新興国群であり、「このグローバリゼーションの波は避けられない」とし、ブラジルも巻き込まれている。
資本主義のグローバル化は金融面に強く表れており、各国の中央銀行はそれに対応できず、単なるローカルな機関になってしまい、かといって世界の金融を管理できる国際機関もない。その矛盾が今回の金融危機を招いたと分析する。
世界の実態経済の成長に比べて、金融システムは急激に肥大化しすぎたとし、「国際的な金融管理に関しては米国が反対しているから何もできない。環境問題に関しても同様のことがいえる。この分野で実効性のある国際機関が必要」と警鐘を鳴らす。
「世界中で失業率が上がっているのは、人件費の安い中国製品のせいばかりでなく、かつては家庭の中にいた女性、人類の半分がわずか3世代のうちに労働市場に入ってきたことも要因」と強調する。
加えて大変化としては「人類の高齢化」を挙げ、「特に日本は著しい」と指摘した。「この傾向は政治的に意味がある。高齢者が増えると国民が変革を嫌い、保護主義、保守化、消費より貯金を優先する傾向が生まれる。その中で政府は痛みの伴う変革をする必要に迫られる」。
ブラジルに関しても高齢化が進み、「今後、高齢者医療、老人学が注目されるようになる」とする。資源も水も足りない中国に対し、「ブラジルは資源も人口もある。世界への資源供給元としての役割を増す」と予測する。
そのために必要なインフラ整備には強力な政治主導が必要であり、「PTとPSDBが共同戦線を張るぐらいの強い政権」が理想的だという。
日本企業に対し、「不安定、安全性が確保されていないといって進出を待っているとブラジルでは出遅れる。日本文化では賭をするような事業方法は好まれないが、ここでは決定が遅いことは致命的だ。少なくとも、今ほどブラジルで成功の確率の高い時代はかつてなかった」と結んだ。
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当日は、エスタ―ド紙元編集長のアリ・シュイナイデル氏、大部一秋在聖総領事ら約100人が出席。代表者交代ではユシロ・ド・ブラジル社の渕上正晴氏と新任の岸裕次氏から挨拶があった。
また電気電子部会の篠原一宇副部会長から3月8~9日にサンパウロ市内ホテルで開催予定の情報通信セミナーについて「無線ブロードバンドおけるビジネスチャンスを探る」との説明があった。