ニッケイ新聞 2010年2月20日付け
トヨタのリコールが大きくなり、日本最大の企業が危機に追い込まれている。アクセルの不備やブレーキの利きが悪いの評判がアメリカで流れ始めた頃は、無料修理の車は700万台を超えるの観測もあって混乱したが、どうやら450万台ほどで落ち着きそうである。ブラジルの年間生産台数は300万台であり、このリコールがいかに大きいかがわかろうというものである▼悪い事は重なるもので生産販売世界一の座も独フォルクスワーゲンに奪われたし、トヨタの現状はさながら「閉門蟄居」であり門前に衛視が立って見張っているようなものだ。社長らは謝罪と釈明に追われ、現場では不良車の回収と修繕に懸命なのだが、あの「お客様第一主義」のトヨタが、こんな不祥事を起こしたのは1937年の創業から初めてだ▼この10年を振り返えると、トヨタは驚異的な成長であり、あのGMをも抜いて900万台の車を造り、販売も一番になり、わが世の春を謳歌する。高級車レクサスで技術の高さを誇りもした。どうやらーこの成長主義が、地面を固める基本を忘れてしまいー組織と機構に緩みを生じたのではないか。この経営責任は重く、世の批判をも甘受せざるを得まい▼昭和31年にはトヨタの車体に「日の丸」をくっきりと描いた朝日新聞記者がロンドンから東京まで5万キロを横断し大人気だった。日本の自動車が中東やアジアを走り抜けたの自信が国民を沸かせたのだ。これは日本の誇りだったのであり、トヨタは今の難問を1日も早く解決し、あの横断5万キロの情熱と地道で技術的な冒険心をとり戻して欲しい。(遯)