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家にこもらず出かけよう=第3世代の人々にも朗報=MuBEで美術療法クラス

ニッケイ新聞 2010年2月23日付け

 サンパウロ市ジャルジン・ヨーロッパ区のブラジル彫刻美術館(MuBE)での美術療法(アルテ・テラピア)を、21日付エスタード紙が紹介した。
 〃カバ〃といえば、灰色のがさがさした皮膚を持つ大きな動物と考えるのが普通だが、19日午前のクラスでは、青やピンクで柔らかく、羽付きのカバも登場した。
 参加者の中には、記憶力低下で日付も分からなくなり始め、一人で家にこもっていた人もいる。
 美術療法そのものは米国で始まったアルツハイマー患者対象の治療法だが、MuBEでは、物忘れし易くなったとか痴呆症で悩む人、認識能力を司る脳の領域訓練を行いたい人までを受け入れ。
 高齢者向けの日常活動の一部になれとの願いで持たれるクラスで使う材料は館内作品。会話の題材が途中で変わる事もしばしばだ。
 担当者が、治療というより、認識活動や社会共存性、生活の質向上のための刺激の一端として、日常生活の中に取り入れたいという同クラス。何もせず家にこもっていると老化も早く、病気にもなり易くなるという。
 当日の参加は6人だったが、朝のカフェを共にし、カーニバルの出来事報告の後、カバの話に。
 アフリカの民話をきっかけに、色々な色や模様のカバを描いた紙を手にした参加者は、見た事、感じた事を言葉で表現、触る、詩を作るなど、様々な活動を行う。
 次週の集まりは、絵などを見ながら、前回の活動内容を思い出す事から始まるというが、民話に出てきたカバの最良の友達である小鳥の事に触れながら、「私達の生活にも、この小鳥の様にいつも傍にいてくれる人がいるけど、貴方の小鳥は誰?」と訊かれると、参加者は即座に、主人や息子、娘、孫と答える。
 言葉やアイデアは容易に忘れても、イメージは残り易いというが、日常活動を録画し、アルバムやカレンダーを作って高齢者が居場所をなくす事がない様試みる家族もいるという。
 日本でも、脳を活性化する〃脳力テスト〃などが注目されて久しいが、参加者の笑みには、様々な脳領域を刺激しあう取組みで仲間も得、社会的な生活を取り戻した喜びも込められている様だ。