ニッケイ新聞 2010年2月24日付け
元駐亜伯大使で国際問題研究所(Cebri)のジョゼ・B・ゴンサルベス所長は22日、フォークランド(マルビナス)諸島の帰属問題で、ブラジルは1982年の亜英紛争にも亜支持を貫いて来たが、当時の亜軍事政権が同諸島に奇襲攻撃を行い、現政権は便宜主義なので南米諸国は亜政府に対し一定の間隔を置いていると評したことを23日付けエスタード紙が報じた。またEUが同諸島をEU領土と見なし、問題は亜英間ではなく亜EU間へ発展する可能性があると見ている。
キルチネル亜大統領はカンクンで22日、33カ国の中南米諸国首脳を前に、「英国が同諸島を亜国へ返還するよう支援を要請する」と訴えた。しかし、同諸島の油田試掘作業は、亜政府の訴えを無視して続行中。
ブラジルはマルコ・A・ガルシア大統領顧問の亜支援声明に留まり、期待のルーラ大統領発言は予定に留まった。しかし、英政府に対する国家主権の尊重を要求する共同声明は発表される。
ゴンサルベス氏は、マルビナス問題を次のように説明した。亜軍事政権のガルチエリ元大統領は、亜経済の行き詰まりへの突破口を同諸島の奪還で見出そうとした。
キルチネル現政権もインフレと不況、農家、マスコミとの板ばさみで苦境にある。それをマルビナスで国民の支持を取り付けるか、ブラジルの支持取り付けかが計算にあると同氏は見ている。
ルーラの裾にぶら下がれば、英政府と議論するより容易だからだ。それにイタイプ発電所の建設許可と引き換えに、コルプス亜発電所の建設権利があった。亜国は、ブラジルに貸しができた。
その後ブラジルは、モラトリアムなどの通貨危機に陥り、英国が対伯借款の保障を拒否した。金に困ったブラジルは、国産航空機を亜国に買ってもらって急場をしのいだなどの腐れ縁がある。
マルビナス諸島は紛争後、近代軍事装備が施され、英本国の遠隔操作下にある。一方、亜政府は軍事費をカットするなど装備はお粗末。亜空軍のスカイホークは、ポンコツ機。フォークランドに待機する英空軍戦闘機は、最新鋭機だ。
まだ問題がある。マルビナスで対峙するのは、英国だけではない。EU共同体が同諸島の住民3千人のために600万ユーロを投じて、住民の生活や産業開発に便宜を図っている。
マルビナスから対亜輸出が困難になったことで、対EUの道が開かれた。同諸島が軍事基地となったことで、雇用も創出された。同諸島の軍事設備は本格的なもので、亜政府も知らないはずがない。