ニッケイ新聞 2010年3月2日付け
空軍司令部は2月28日、チリで2月27日未明マグニチュード8・8の巨大地震が発生、帰国希望ブラジル人300人のうち12人が帰還と発表したことを3月1日付けフォーリャ紙が報じた。ブラジル人犠牲者の報告は現在までない。さらに28日マグニチュード6・6の余震。バチェレ政権は非常事態宣言を発令、略奪などの混乱を防ぐため治安部隊を配置。一部地域では夜間外出禁止令も出された。震源地はサンチアゴから南西へ325キロの海底。1日午後2時半現在、地震と津波による死者は723人、行方不明者は最低19人と報告されている。被災者は約200万人、崩壊家屋は50万戸に上る。
チリ在住のブラジル人1万2千人は、公共設備へ避難した。外務省は現地から、ブラジル人居住者や一時滞在者に対応する専門チームの派遣を求められた。ハイチ地震にチリ地震と、短時間に地球規模の現象が発生し、他山の石に、ブラジルは何を学ぶか。
チリは南米プレートとナスカ・プレートの接触地点に位置する地震国で、プレートの移動で10年毎に巨大地震が起きる。微震を入れるなら、年間3500回も地震が起きている。
ハイチは巨大地震が一生に一回だが、自然災害は絶えない国だ。だから自然災害への対策は事前に考えるべきだが、何もしていない。
ハイチもチリも貧しい国だが、チリは地震対策などの法整備が行われている。国民には地震訓練もしてある。ハイチは無秩序で、単なる雑居国家だ。ハイチ地震から1カ月半経つが、国民に再建の意欲はない。
ハイチとチリ両国は、自然災害と地震が不可避な国であることは明白。いかに被害を最小限に食い止め、いかに速やかに修復するかが両国の課題といえる。
ハイチ政府の国家建造物は、ほぼ全壊した。地震前に国家機関の一部分だけでも確立していたなら、行政再建の方法もあった。しかし、外国政府の援助がなければ、ハイチは何一つ国家機能が動かない状態にある。
人間は地震を押し留めることはできないが、地震の被害をできるだけ食い止めることはできる。これからの異常気象の時代、人類は災害と背中合わせで生きてゆく。
ハイチ地震とチリ地震から、貧困は不幸を招くことを学んだ。貧しい国ほど犠牲者が多い。自然災害は非業無比だが、人間が立ち向わねばならない現実といえる。人口に対する貧困率が高いのも、中南米なのだ。