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米国務長官、首都に到着=二者択一の談判に=ブラジルは敵か味方か=イランが外交の〃踏み絵〃

ニッケイ新聞 2010年3月4日付け

 ヒラリー・クリントン国務長官は2日、ブラジリア空軍基地へ到着、同日夜はシャノン在伯米大使と会合と3日付けエスタード紙が報じた。3日は、ルーラ大統領やアモリン外相と会談。オバマ米政権は発足後1年余、ようやく外交の責任者をブラジルに送ることになった。伯米関係はオバマ大統領の〝カーラ〟(タフガイ)発言に見られる親密さはなく、米国務長官の態度には外交辞令抜きの強引な姿勢だけが目につくと同紙が評した。ヘラルド・トリビューン紙も米政府のブラジル認識は、後手であると批判している。

 ブラジル政府の親イラン政策が、伯米関係で目の上のタンコブとなっている。両国の間は農産物補助金にまつわる通商問題が長期戦となり、潜在的なしこりを作った。それにホンジュラス政変に対する米国の対応が、不協和音をかもした。
 コペンハーゲン環境会議を米国始め先進国が不発に終わらせたことも、ルーラ大統領を不快にさせた。だから中南米カリブ首脳会議では、米国やカナダ抜きの中南米カリブ共同体を発足させた。
 米国務長官の来伯目的は、イランに関して米英仏露に協調を強いる説得と思われる。伯外務省は米国務長官が4列強の代弁者として、ブラジルがどちら側につくのか二者択一の談判に来たのだと見ている。
 ルーラ大統領は、伯米関係を明白にする考えだ。大統領は世界各国を歴訪した上で、イランの孤立化は余計な争いを招くだけと考えている。
 ヘラルド・トリビューン紙は、米外交政策について次のような論評を掲載した。米国務長官のブラジルに関する発言は、不穏な内容であった。しかし、ブラジルが想像以上に成長した国であることに、今ようやく気付いたようだ。
 ルーラの国際地政学上の勢いは、昇り竜だ。だから今回のヒラリー訪伯は、ブラジルを二流国から一流国扱いへ見直すことになりそうだ。米政府は、中国やロシア、インドを柱とする多極体制を懸案している。
 当然ブラジルもその1極となるはずだが、ホンジュラスやコロンビア米軍基地、イラン関係で伯米関係が揺らいだ。国務長官の訪伯は、時期を逸した後手外交だとの声も上がっている。
 オバマ政権は、失業や医療、財政などの国内問題で精一杯。それに加え、イランやイラク、アフガン、中国も含んだ外交問題を抱えている中、クリントン国務長官の本領が問われそうだ。