ニッケイ新聞 2010年3月4日付け
喜劇―というよりも不毛かつ無意味、非論理的な展開は、不条理劇のようですらあった。60万レアルの公金が消えた神奈川文化福祉協会の総会のことである▼不正会計を行ったとされる高村純元副会長(三世)がとうとうと持論を述べる。協会側の主張とは全く相容れないのだが、何を言っているのか全く分からない。本人は「日本語の問題」としているが、言語明瞭・意味不明で有名だった竹下登元首相の答弁を思い出した▼一度に14万レアルもの金額をニセ弁護士に振り込んだ件について、高村氏は「会長と会計の3人で行った」と主張。その場で当の二人が否定した。失笑が漏れる会場。「調べたら分かる。私が真実です」と胸を張る高村氏。嘘つきと言われたに等しい会長、会計は黙り込んだ▼コロニア巷間からは、「一人で出来るわけがない。会全員で組んでいるんじゃないか」と演劇どころか、狂言説まで聞こえる。そんなシナリオがあり得るなら、コラム子も人間というものを考え直す機会にしたい▼総会が終わった頃、個性派の役者(会員)が登場、「お前、金をどうしたんだよ! 返せよ!」と糾弾を始めた。顔を紅潮させ、「騙されたのは私です!」と抗弁する高村氏をよそに「…ダメだな。やっぱり県人会は一世で終わりだよ」。その場にいた二、三世の表情は演技を超えた▼前会館を自費で寄付した元県知事内山岩太郎、二宮金次郎像に募金した県民に思いをいたせば、喜劇どころか全くの悲劇。おにぎりを頬張り、「だから人生は面白い!」と村田洋会長が言い放ったキメの一言には痺れた。続きは乞うご期待、神奈川劇場の一幕――。(剛)