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クリントン米国務長官=要請をブラジルが拒絶=対話路線を継続=話し合いは平行線=「イランの口車ではない」

ニッケイ新聞 2010年3月5日付け

 アモリン外相は3日、クリントン米国務長官と3時間にわたってイランの核問題について意見を交わしたが、平行線を辿るに留まったと4日付けエスタード紙が報じた。同長官は記者会見に臨み「イランは、ブラジルを口車に乗せた」と示唆、ブラジルは国連安保理の制裁決議を支持すべきだと主張。米政府の見方によれば、イランはブラジルやトルコ、中国に異なる策略を吹き込んだというのだ。同長官は「イラン制裁が承認されれば、物事は円滑に治まる」と述べた。

 アモリン外相は、米国務長官の「ブラジルがイランの口車に乗せられた」とする発言に不快感を見せた。「ブラジルは独立国家で独自の世界観を持ち、制裁は非生産的である」と反論。
 同外相は伯米双方が同一見解と思想に立つなら、解決策はあると述べた。「イランのウラン鉱石を核燃料用に低濃縮する権利まで取り上げる、問答無用の制裁では、何もできない」という。
 ルーラ大統領は、アモリン・クリントン会談に先立ち「イランを窮地に追い込んでの交渉は、外交の道義に反する。イランが平和利用の核開発というなら、ブラジルと同一の立場に置くべきだ」と政府見解を示した。
 米国務長官は5カ国の支持案を携え、ブラジルも窮地へ追い込む恫喝外交のようだ。「ブラジルの支持有無に関わらず、経済制裁は近いうちに実行に移される。しかし、その選択に伴う責任は、ブラジルに帰する」というのだ。
 記者会見に臨んだ同長官は、「イランは核兵器の製造に挑み、中東問題のガンとなっている。米外交政策の最大懸念は、ブラジルがイラン問題でどう対処するかにある。肝心のイランは、外交の窓を閉じている。制裁は、その窓を開けさせる手段だ」と発言した。
 一方、アモリン外相は、米国にはイラク侵略という前例もあるので、イランで同じ轍を踏ませない考えだ。イランが核兵器を製造しない保障として、経済制裁は必要という同長官の主張は、イラク侵略の時と同じ科白だと指摘した。
 イランは複雑な国家であり、制裁の一筋縄で核問題を解決できないと外相は見ている。イラク武力侵攻のために世界が蒙った損害を、米国は理解していないと非難。
 ブラジルは日和見国家ではないから、独自の考えで判断をする。大勢に流されて国連決議に参加しないし、強大国の圧力に屈することもないと外相は宣言をした。