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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年3月6日付け

 ハイチにチリと今年は大きな地震が続く。あのコロンブスが発見?した港でも支援の食料品を奪い合う騒ぎがあったし、チリはもっとひどいらしい。震源地に近いコンセプシオンでは略奪や放火が起こり、政府派遣の治安部隊も悲鳴を挙げている。スーパーや民家を襲い食べ物や冷蔵庫などを奪い去る悪辣なものであり、ここ暫くは混迷が続きそうだ▼こんな大きな災害のときには、よくこのような哀しい騒動が発生するし、暴徒と化した住民たちだけを責めても致し方ない。言うまでもなく、強奪や火付けの暴虐な行為は許されないにしても、大きな地揺れで道路に亀裂が走り、震源地の近くでは、波の高さが10メートルを超える津浪があり、住んでいる人の心も揺れ動いている中での暴動と見たい▼あの関東大震災のときにも悲劇は多い。浅草の名物だった12階建ての凌雲閣が倒れ、皇族3名が薨去し、英文学者・厨川白村も鎌倉で津浪に襲われ泉下へ。木造の家屋倒壊と火災による災禍が被害を甚大にしたのだが、忘れていけないのは市民らの流言飛語が広がり朝鮮人殺害が続発したことである▼当時の内務省によると朝鮮人死亡者は231人となっているが、韓国人の調査では6000人を超えている。真偽は不明ながら埼玉県の本庄事件など暗く陰鬱な事件は多い。尤も、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」と横浜・鶴見警察署の大川常吉署長(川崎市警察の説もある)に迫った人々に「その水を持って来い」と一升瓶を飲干して朝鮮人を救ったの美談も残っているから、哀しい裏には明るい話題もあったのである。(遯)