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ブラジルは健全発展の可能性高い=国際公共政策研究センター=田中理事長、小泉顧問が会見=高速鉄道などインフラ研究も

ニッケイ新聞 2010年3月9日付け

 国際公共政策研究センター(CIPPS)のミッションでブラジルを訪れた田中直毅理事長と小泉純一郎顧問(元内閣総理大臣)が5日午後5時からサンパウロ市内のホテルで会見した。田中理事長はブラジル経済について「中長期的に健全に発展する可能性が高いと思う」と印象を語り、今後、国家社会開発銀行(BNDES)と共同で研究を進めていく考えを明らかにした。

 ミッションの一行は先月28日から5日まで滞伯し、ブラジリア、リオ、サンパウロで政府、企業関係者と懇談。田中理事長は「ブラジルについての研究を深めること」と目的を説明した。
 同センターでは中国、ロシア、インドなど他のBRIC諸国の関係機関ともパートナー関係を結んでいる。田中理事長はBNDESのルシアーノ・コウチーニョ総裁と連携の申し合わせをしたと明かし、「BNDESを始めとするブラジル側カウンターパートとより深い研究を進めたい」と語った。
 具体的な分野としては、ブラジルが経済発展と環境保全の取り組みを両立させている点に関心を示したほか、バイオエタノールに関しては、食糧生産を損なうことなくエタノール生産を行う技術をアジアやアフリカへ移転する試みに触れ、「どう支援し、プロジェクトを組めるか、我々の研究課題の一つだと思う」と述べた。
 さらに高速鉄道、情報通信などのインフラ整備についても「日伯方式とも言えるものを編み出しつつ新インフラ整備に貢献することが可能か、あわせて議論していきたい」と述べた。
 コウチーニョ総裁との懇談では、「パートナーシップに対するブラジル側の積極的な意志を感じた」と感想を述べ、今後若い世代の研究者をどう巻き込んでいくかが重要との認識で一致したという。
 現在のブラジルについては、米国に依存していた70―80年代の状況から、ラテンアメリカ地域の先駆けとして米国と21世紀の関係を築こうとしている段階と述べ、今後米国の景気が停滞してもブラジルが順調に発展できるかがポイントとの見方を示した。
 田中理事長はまた、日伯間における温室効果ガスの排出権取引についても研究を進めたいと述べた。
 小泉顧問は3日にルーラ大統領と懇談。04、05年の首脳相互訪問により日伯関係が順調に強化、発展していることを喜んだという。小泉顧問は、首相時代に掲げた脱石油推進に対して大統領も同感の意を示したと語り、「国際社会の舞台でも日伯が協力できる分野がある」と述べた。
 小泉顧問はまた、14年のサッカーW杯、16年のオリンピックのブラジル開催に関して「ブラジル経済にさらに弾みをつけると思う」と発言。ルーラ大統領に環境を重視した大会にすべきと提案し、大統領も賛意を示したという。
 同ミッションの一行は同日夜、日本への帰途に着いた。