ニッケイ新聞 2010年3月12日付け
米上院農業委員会は10日、綿補助金の削減に対する報復措置として、ブラジル製品の一部に付与した特恵関税(SGP)措置を中止する意向を表明と11日付けエスタード紙が報じた。
これが、米側の報復第1弾といえそうだ。同委員会は特恵措置が、ブラジルでどう評価されていたのかを見るという。米国はブラジルの産業育成のため、工作機械や自動車部品、鉄鋼品、化学薬品などに10%の関税削減を付与してきた。
ブラジルは08年、28億ドルの対米輸出品でSGPの恩典を受けた。しかし、ブラジル政府は8日、第1弾として報復関税の対象となる102品目を発表。米国が綿補助金削減の代替案を発表しないなら、ブラジルの報復関税は30日後、執行されるという。
ブラジルの報復措置は、第2弾として知的所有権、第3弾ではサービス部門の扱いが発表される。米側はブラジルの様子見と理解しているが、内容が不透明なので交渉の仕様がないとしている。
同委員会は、綿生産者への補助金政策変更が報復解決の鍵と見ている。政策変更は、オバマ大統領側近が立案し、同委員会の承認を受ける。
同委員会のメンバーは綿生産州の選出だから、オバマ政権を揺るがす微妙な問題といえる。さらに米国は1年後に国会議員選挙を控え、地元に不利なことはできない。
米国はWTO(世界貿易機関)で敗訴後、綿補助金の削減を実施したという。しかし、ブラジル政府は、WTOが確認しなければ納得しないと返答。米政府の見方では、綿補助金で国際相場にブラジルが騒ぐような影響はないというのだ。
ブラジルの工場経営者は、米国の特恵関税の中止を恐れている。ブラジルの報復措置は、特恵待遇の中止だけでなく、エタノールやその他の米向け輸出品全般に影響を及ぼすとFiesp(サンパウロ州工業連盟)は見ている。