日系社会ニュース

「政治に倫理を」呼びかけ=日系の政治意識運動=存在感に相応しい貢献を=4団体代表が個人で=「意識ある投票を」

ニッケイ新聞 2010年3月12日付け

 「33万票あれば3人は当選させられる。もったいないと思いませんか?」。森口イナシオさんは記者会見で、そう問いかけた。前回、06年の州議員選挙で30人もの日系候補が出馬して票が割れ、誰一人当選しなかったのは記憶に新しい。5日夜、サンパウロ市内のニッケイパラセ・ホテルで森口、巽ジョー、木多喜八郎3氏が記者会見し、10月の州連邦選挙にあたり、日系人が中心になって広く「政治に倫理を」と呼びかける運動をすることに関して、日系社会からの賛否の意見、反応を知りたいと語った。呼びかけ人は4人で、当日所用で欠席したが与儀昭雄氏も入っている。

 この呼びかけをしているのは文協、援協、県連、アリアンサの4団体の会長だが「あくまで個人としての呼びかけ。会とはいっさい関係ない」と森口氏は強調する。
 「コロニアは伝統的に政治には消極的だった」。地方で市議会議員の経験もある巽ジョー氏はそう前置きし、昨年騒がれた上院の醜聞、現在のブラジリア連邦直轄区の与党不正資金疑惑など、ブラジル政治状況が乱れてきている中での選挙であることを強調する。
 「いま政治に倫理が必要であると訴えることが、一般社会全体にとって必要な時期であり、日系人として何か運動ができないかと考えている」という。「ただし、特定の政党や候補を名指しで応援する運動ではない」と釘を刺す。
 森口氏は先の州議選挙の日系候補30人の得票リストを見せ、6万4千票を得票して最上位だった西本エリオ氏(後に繰り上げ当選)から最下位(91票)までをながめ、「専門家によれば33万票あれば3人当選させられる。誰に入れろとは我々は言えない。でも『意識ある投票を』と呼びかけることは意味があるのでは」という。
 「百周年で一般社会から高く評価された日系人の勤勉さ、まじめさを代表するような人物を、我々のコムニダーデの規模や影響力にふさわしい人数分送り込むことを考えても良いのでは」。
 多くの日系団体の定款には「政治活動に関わらない」との一項があることから、特定の候補への応援に限らず、一般的な政治意識向上活動すらも行われてこなかった。
 木多氏も「倫理ある政治家を送り込むことは、日系人の一般社会への貢献として今後重要になる。コムニダーデが中心になって意識ある投票を呼びかけ、しっかり仕事をしてきた人、倫理感のある〃正しい人〃に入れてもらうよう呼びかけることは意義がある」との見解をのべた。
 巽氏は最後に「今回はこの考え方に対するコロニアからの反応を知りたい。もし批判が多ければそれでおしまい。好意的であればもっと具体的なアイデアを考えたい」と締めくくった。
 記者からは「市民の政治意識を変える教育は永遠の課題。先の長い話すぎでは」と水を差す意見もでたが、巽氏は「終戦時、天皇陛下は『耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び』と言われた。時にムリだと分かっていても、すぐに成果が出ない場合でも、好い方向に向かうと信じてやらなきゃいけないこともある」と力を込めた。

こちらの記事もどうぞ

Back to top button