ニッケイ新聞 2010年3月13日付け
10日夜、下院が政府ならびに石油生産州の期待を裏切る暫定令を承認し、リオ州知事が「自分の政治家生涯で最も理不尽な行為」と批判する事態が生じた。
問題の暫定令は、石油生産に伴うロイヤリティ分割に関する暫定令Ibsen。岩塩層下の石油採掘本格化のため、関連法案承認を急ぐ政府が、承認阻止を図っていた暫定令の一つだ。
11日付伯字紙によれば、暫定令の具体的内容は、ロイヤリティの半分を全国の州が、残りの半分を全国の市が等分して受け取るというもの。
この等分案は、リオやエスピリトサントなどの石油生産州やそこに属する市、ならびに政府の大幅減収を意味する一方、非石油生産州や市には濡れ手に粟ともいえる増収を意味する。
というのは、09年12月提出の政府原案でのロイヤリティは、連邦政府に20%、岩塩層下の石油を有するサンパウロ州、リオ州、エスピリトサント州に26・25%、石油生産市に18%、石油の配送に関わる市に5%の配分となっていたため。
原案では、残り20・75%は、非生産市と非生産州に8・75%と22%で配分の予定だったが、暫定令Ibsen承認でこの配分比率が大幅に変わる事になる。
同暫定令の影響が最も大きいリオ州では、463億レアルの10年度予算中、50億レアルを見越していたロイヤリティ収入が、1億レアルのみになる計算だ。エスピリトサント州でも、ロイヤリティ収入は6億レアルから2億レアルに減額となりうるという。
12日付伯字紙によれば、下院での承認を悲しむリオ州のカブラル知事は、11日のカトリック大学での講演で「過去に例を見ないほど無責任な法案審議」と批判。「このままでは、14年のW杯や16年のオリンピック開催も無理」で「リオ州は破綻」と涙を流す場面も見られた。
今回承認の暫定令を上院も承認した場合、裁可の段階で拒否するとルーラ大統領が同知事を慰めたが、大統領の拒否権も議会で覆された場合、最高裁に持ち込んで暫定令発効阻止との話もある。ロイヤリティの行方は未だ不透明だが、10月の選挙での得票狙いとの批判は的を射ている様だ。