ニッケイ新聞 2010年3月16日付け
中途半端な中東和平への介在を批判される中、ルーラ大統領は14日、エルサレム空港へ乗り込んだと15日付けフォーリャ紙が報じた。中東問題の深刻さに較べ、ルーラ発言は軟弱であると批評や揶揄が交差した。
ブラジル外交の真価が問われたのは、ルーラ大統領が中東へ旅立つ直前に、パレスチナ自治政府が将来の首都と見なしていた東エルサレム郊外に、イスラエル政府が1600戸の住宅建設を発表したことへの、伯米両政府の対応差であった。
ブラジルは「深刻に憂慮」と表現するに留めたのに対し、クリントン米国務長官はイスラエル政府を「米国の面汚し」と抗議。同国政府は、オバマ政権との関係を見直すとまでいい出した。
気の利いた化け物が引き込むころのルーラ御大のお出ましであるが、中東和平への意欲には軒昂さを見せた。大統領のエルサレム到着時、中東和平は過激発言が出るまで屈折し座礁、再開の目処はなくなった。
アモリン外相は、米国務長官の過激発言に驚いたが、「双方の頭が過熱しているとき、平和の使者は頭を冷やすのに最適だ」とし、ルーラ訪問を評価した。
ルーラ一行の到着をガルシア大統領特別顧問が「米政府が強硬な態度をとり続けるなら、中東和平には別の仲介者が必要だ。その一つがブラジル」と代弁した。
また同顧問は「原理主義の誕生が、中東問題を含めて世界のテロの中心議題ではないか。それなら原理主義を追放することではなく、理解すれば問題解決につながるのではないか」という。
さらに同顧問は、ルーラ大統領の「パレスチナは、ガザを支配するハマスや、シスジョルダニア(ヨルダン川西岸地区)を管理するファタハも含めて団結せよ」とのメッセージを通告した。ルーラ大統領はパレスチナとの対話を求めているが、ハマスもファタハも代表が決まっていない。
16日には米国、17日にはEUの代表も同国を訪れることになっているが、そんな状態で、イスラエルとパレスチナ、米国、EUの代表が中東和平会議を行っても、話し合いは無意味に終わると同顧問がいう。また同顧問は「中東問題は、イスラエルとパレスチナだけの問題ではない。その背後に平和を阻害するとてつもない大組織があることだ」と訴えた。