ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 伯大統領聖地訪問=〝平和の使者〟の称号付与=仲介打診の反応は?=イ国はイラン制裁で結束=真価問われるルーラ外交

伯大統領聖地訪問=〝平和の使者〟の称号付与=仲介打診の反応は?=イ国はイラン制裁で結束=真価問われるルーラ外交

ニッケイ新聞 2010年3月17日付け

 ルーラ大統領は15日、ブラジル共和国史上初めて聖地を公式訪問した国家元首になったと16日付けジアリオ・ド・コメルシオ紙が報じた。同大統領は中東和平仲介役の可能性を打診し、イスラエルのペレス大統領から〃平和の使者〃という称号を付与された。唯一の成果は、ブラジルとイランの接近を非難することで、イスラエル議会の与野党を結束させたこと。ルーラ大統領は「私は母の胎にあるときから平和主義者で、争いに関わった記憶はない」とクネセト(イスラエルの立法府)で宣言した。

 中東和平に挑むルーラ大統領の外交戦略は、仲介国の一つにブラジルを加える要請で始まった。それに対するペレス大統領の答辞には、実質的な意志表示はなかった。
 ルーラ大統領は「不可能を可能ならしめるのが政治。ブラジルほど平和を愛する国は、地球上にない。平和に払う代価は、限りないもの。我が党PT(労働者党)は複雑怪奇で、ケンカをするが平和である」として一同を笑わせた。
 ルーラ大統領は政権獲得時の02年、イラクへ武力介入を行ったブッシュ前米大統領と話し合った。ブッシュが「イラクは、ブラジルの問題ではない。ブラジルは、貧困撲滅と戦っておればよい」と答えた。
 ルーラ政権下のブラジルは、ボリビアのモラレス政権誕生に協力したが、モラレスは大統領就任早々、ペトロブラスの接収を行い、ブラジル資本の精製所に軍隊を送り込んで占拠した。「サンパウロ市の労働者が、ボリビアの先住民とケンカをすることを、イスラエル国民はどう思うか」と問うた。
 「話し合えば、問題は解決する。ボリビアの問題は、これまで金髪で青い目をした大統領が、スペイン訛りのボリビア語で話していたことだ」中東和平も同じことではないかというルーラ大統領の見解のようだ。
 イスラエルの実力者と目されるベンヤミン・ネタニヤフ首相は15日、東エルサレムの住宅建設は国際社会の非難を浴びるとも、万難を排して決行を表明した。イスラエルと米国は和平交渉を中断したが、座礁ではないという。水面下で交渉は続いているようだ。
 ルーラ大統領は、イスラエルに続いてパレスチナやイランも訪問し、「平和のウイルスを撒いて歩く」予定という。イスラエルはブラジルに仲介役を要請する気配を見せていないが、ルーラ大統領は多数の仲介役を中東問題に投入した方がよいと見ている。