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日系高齢者のより良い生き方=援協セミナー=「福祉ネットワーク作りを」=桃山学院大学=金本教授が講演

ニッケイ新聞 2010年3月23日付け

 日系福祉ネットワークを作り、限られた福祉の資源を最大限活用する――。金本伊津子・桃山学院大学経営学部教授(異文化間コミュニケーション論)は4日、サンパウロ日伯援護協会主催の南米日系高齢者対策福祉事業セミナーで「日系高齢者のライフ・デザイン(人生設計)とウェル・ビーイング(心地よい生)」と題し講演を行った。高齢化が進む各日系社会の横の繋がり作りを提言し、より良い老後のモデルを模索する必要性を説いた。

 北米、ハワイ、ブラジルの多文化社会における日系高齢者の実態などの研究を行い、1998年から年に数回来伯して研究を続けている金本教授。
 1995年には7%前後だったブラジル日系高齢者(60歳以上=ブラジル基準)は2009年には10%(援協による推定)、地方によっては40%というデータを引用し、「65歳からが高齢者とされる日本より早く老後を迎え、また寿命の短いブラジル人に比べて老後が長い」とブラジル日系高齢者の特徴を指摘し、少数派モデルの模索の必要性を説く。
 デカセギによる介護人の不在や、世代とともに進む非日系人との結婚など家庭内における文化環境の複雑化にともなうコミュニケーション問題なども特有の問題として挙げた。
 心地よい生(ウェルビーイング)の老いを求めるために、老ク連などの「自ら集い、考え、関わるといった自主的な活動は、老いの文化のパイオニア」としつつ、「日本語や文化伝承の拠点となる文協や日本語学校、県人会などが、世代を超えて生きる場を共有できる場所となる」と広い視野で福祉活動をとらえる金本教授。
 その中で「心地よい老いには経済活動に繋がることが必要」とし、日本のある町役場が中心となって必要な時に必要な高齢者が都市部のレストランに柿の葉を販売するというシステムを紹介し、「発想の転換や多様性を考えていかないといけない」と提案した。
 金本教授は「言うは易し、行うは難しですが」と前置きし、「今つながっていない日系福祉ネットワークを繋ぐことで限られた福祉の資源を最大限活用できる」と強調し、ネットワーク作り専門の「アウトリッチ・コーディネーターの育成がこれから必要」と話し講演を締めくくった。