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救済会=吉岡会長が3期目続投へ=厳しい財政状況続く=他団体との協力関係模索=今年は歴史編纂も

ニッケイ新聞 2010年3月24日付け

 老人福祉施設「憩の園」を運営する社会福祉法人救済会は13日、サンパウロ市文協ビル5階のエスペランサ婦人会サロンで2010年度定期総会を開催し、約50人が出席した。役員改選が行われ、吉岡黎明会長(73)の3期目の続投が決定。また今年は、救済会の歴史編纂事業を進めていくことも報告された。同会では、会員・寄付が減少する一方で運営費が上昇する厳しい財政状況に直面しており、新執行部のもと新たな対策が期待されている。

 当日は森口イナシオ援協会長、千坂平通JICAサンパウロ支所長、木多喜八郎文協会長などが来賓として訪れた。
 憩の園での「施設福祉」と、「地域社会福祉」を柱に事業を行う同会。同園では在園者への医療、看護、介護や理学療法、作業療法、言語療法などを行っているほか、職員を対象とした高齢者介護技術の研修会、在園者、家族会の集まりなどを行う。昨年7月にはJICAシニアボランティアの潮ミツエさんが着任し活動している。
 同園の在園者は昨年末現在で男性33人、女性55人。昨年は472人の新規入園希望者があり、26人が入園した。平均年齢は86歳。園内での諸行事のほか、各地のバザー、文化イベントなどを訪れた。
 歌手の成世昌平さんなど日本の歌手・芸能グループや日系団体なども同園を訪問。恒例のバザーや支援歌謡祭など、運営支援のイベントも多い。日本側でも、96年に発足した在日協力会が募金や物品の送付などを通じて運営を支える。
 その一方、ブラジル社会の高齢化を見据えた地域社会福祉にも力を入れ、同園や文協などで老人介護者家族・ボランティア向けの講座も開講している。
 同会の昨年度収支は、収入が約287万3千レアル、支出が約270万5千レアルで、約16万7千レアルを繰り越し。今年度は297万8千レアルの予算を計上し、承認を受けた。
 今年度事業計画を発表した相田祐弘第一副会長によれば、今年は例年の行事に加え、同会の歴史編纂事業を進める。さらに、一昨年の同園創立50周年で完成した「宮腰千葉太ホール」の利用を促進していくとしている。
 相田副会長は、同会の運営費の7割以上を人件費が占め、資金的なゆとりがない現状を説明し、「今年は急を要することを優先し、他にできることをやっていく」と方針を説明。「今の経済状況ではたいしたことができないが、会の使命を堅持していかないといけない」と話した。
 続いて役員改選が行われ、吉岡氏を会長とする役員会および監査役、評議員会メンバーの単一シャッパを承認。吉岡会長は、職員、関係者へ感謝の言葉を述べるとともに、会員、寄付が減少する中、新たな資金集め、団体運営の方向を模索する必要性を強調した。
 会長は総会後、ニッケイ新聞の取材に対し、「一世世代が高齢化する中、協力を待っているだけでは心配がある。よりダイナミックな運営を目指し、文協、援協など他の団体との協力関係も作っていきたい。この任期の間に若い人にやってもらえるようにしたい」と抱負を語った。
 最後に執行部から元会長の左近寿一氏(86)を名誉会長に推薦する提案が出され、承認された。左近氏は同会創立者の渡辺マルガリーダさんとの思い出に触れ、「マルガリーダさんに対する恩返しとして、会のためつくしたい」と述べた。
 当日はまた、同会の顧問、役員を務め昨年死去した田中洋典顧問、西川蔚顧問、淺川正雄第二会計へ哀悼の意が表された。
 総会後、出席者はエスペランサ婦人会の皆さんによる昼食を囲み、懇談した。
 救済会の歴史編纂事業の中心となるのは、長年同会事務局長をつとめ今年から常任理事に就任した吉安園子さん。吉安さんによれば、同事業は昨年計画されたものだが、財政状況が厳しいこともあり遅れていた。
 実際の編纂作業は、JICAシニアボランティアとして移民史料館で活動した小笠原公衛さんの協力などを受けて年表の整理は大体できており、今後、最近のものを整理していく考えだという。
 ただ現在の運営状況を考慮して、出版は経済的な安定を待ってからになる見通しだ。