ニッケイ新聞 2010年4月1日付け
コンセルバトーリアの民宿に宿泊する一行、ツアー4日目の晩はセレナータを聞きに街へと繰り出した。週末の夜はどこの街角でもセレナータ、セレスタ、ショーロが流れるこの街は、観光客で賑わう。
午後11時過ぎ、広場のセレナータの象徴ジョゼー・ボルゲス・デ・フレイタス・ネット像前から、セレナチスタによる演奏の行進が始まる。行進はゆっくりとした足取りで区画に沿って進む。心地よいリズムにのりながら一行も続いた。
5日目ツアー最終日に一行が足を運んだのは、宿泊する民宿の農園内にあるカシャッサ工場。柔らかい小雨が降り注ぐ中、農園内を歩いて向かった。
工場に足を踏み入れると、一面に甘い香が漂う。カシャッサの樽を寝かせた倉庫も案内され、一行からは「匂いだけで酔っ払っちゃったわ」と声が挙がる。興味深そうに見学する大原光人さん(86、鳥取)も「一度製造現場を見てみたかった」と嬉しそうだ。
従業員によりカシャッサのおいしい飲み方が伝授される。
「まず口に含んで全体に広げて。5~10秒匂いを楽しんでから飲む。そうしないと、匂いや味が外に抜けてしまう」
その説明に納得しながら、一行も同地オリジナルのカシャッサを試飲。風味豊かなその味に、購入する人も。
昼食後、バスに乗り込み、旅の余韻に浸りながらようやくサンパウロへの帰途へ。2号車でガイドさんが次回への参加を質問すると、半分近くの手が挙がった。参加者の胸には、すでに次の旅行への期待が高まっているようだ。
午後8時過ぎに、リベルダーデに到着。土産を両手に下げる一行に、特に疲れた様子は見えず、満足そうな表情が浮かんでいる。
初めて参加したというサントアマーロ文協婦人部の吉井美智さん(80、北海道)、吉井志美子さん(72、二世)、竹内冨士枝さん(68、東京)は、「どこの日本人会も温かく歓迎してくれた。各婦人部の料理の味を知れたのも良かった」と楽しめた様子だ。
以前満席で参加できず「ずっとこのツアーに参加したかった」と話すのは、平谷伊佐さん(流名、66、和歌山)。「想像通り感動の5日間だった」と穏やかに語り旅の最後にもう一句。
「それぞれの ふるさと抱いた 移民老ゆ」―。今回もまた、日本移民の辿った道を振り返り、その歴史を偲ぶ回帰の旅となったようだ。
(長村裕佳子記者、終わり)
写真=各地日本人会と友好を温めたツアー参加者の皆さん、コンセルバトーリオの民宿で/カシャッサ工場を見学