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「毎日がカランジルー」=懸念される犯罪の地方化=子供の教育が最大の防犯

ニッケイ新聞 2010年4月2日付け

 1997年からの10年間で見たブラジル内の殺人事件被害者数は、総数としては大きな変化はないが、サンパウロ市とリオ市の大都市圏で著しく減少した反面、地方部で増加しており、「犯罪の地方化」が起きていると3月31日付けエスタード紙などが報じている。犯罪は貧富の格差が開くほど起きやすく、被害者の大半が男性の若者であり、今まで以上に若者が学校に通うようになる社会を実現する必要があると報じている。
 「毎日、カランジルーの大虐殺に匹敵する人が殺されている」。同紙によれば犯罪研究家のジュリオ・ジャコブ氏はそう語り、ブラジル内で07年に4万7700人が殺害され、1日当たりだと117人になり、1992年に起きたカランジルー刑務所暴動鎮圧による111人の囚人虐殺以上の人数が、毎日殺されていると警告した。
 全ブラジル人口における死亡率は1997年が10万人当たり25・4人で、07年が同25・2人で、10年であまり変化がない。以下、数字は全て最初が97年、次が07年のもの。
 かつては人口の多い州が危険だったが、このところ地方の犯罪が増え、質的な変化が起きている。例えばサンパウロ州は全伯5位(36・1人)の危険都市だったが25位に急降下した。1位だったリオ州(58・8人)も29%も減って4位(40・1人)に下がった。
 逆に、アラゴアス州は11位(24・1人)だったが147%も増えて1位(同59・6人)となった。またパラ―州も20位(13・2人)だったのが7位(30・4人)に急上昇した。これ以外にマラニョン州、ミナス州なども150%増を記録している。
 最も安全なのはサンタカタリーナ州で24位(8・4人)だったのが最下位の27位(10・4人)となっている。
 大都市圏別でみると、サンパウロは9202人も死亡していたが、3812人に激減した。リオも6857人から4855人だ。最も増えたのはベロ・オリゾンテでたった727人しかいなかったのに2225人と3倍になっている。またベレンも362人から803人と増えた。
 サンパウロやリオの警察の取り締まりが厳しくなり、犯罪組織が地方に移転している可能性が指摘されている。
 同記事でジャコブ氏は「絶対貧困が原因というよりは、貧困者のすぐ近くに富裕者が住んでいるというコントラスト、身近な所得格差の拡大が犯罪増加の背景にあるとしている」と分析している。被害者に黒人やパルド(褐色)が多いのは、人種の問題というよりは、貧困階級にその肌の人が多いので、結果的に多くなると見ており、中でも男性の若者が顕著に多い。
 「子供や青年が学校にいくことが、最大の防犯だ」と同氏は結論付け、もっと若者が簡単に教育を受けられるよう、国が投資すべきだと論じた。