ニッケイ新聞 2010年4月6日付け
サンパウロ市のビラ・フォルモーザ墓地とビラ・ノーバ・カショエイリンニャ墓地では、埋葬された死体から流れ出る腐敗した体液などの成分が地下水を汚染している危険があるという衝撃的な事実を5日付けエスタード紙などが報じている。
一般的に、死体からは毎日200ミリリットルの粘着性の腐敗水が出てくるという。これが雨などで墓からしみ出し、墓地下の浅い部分を流れる地下水に浸透している可能性があるようだ。
この腐敗水は埋葬後、1カ月で出はじめる。60%は水分、30%は鉱物成分、10%が有機成分で、その中に多量のプトレシン、カダベリンなどの有害成分が含まれている。しかもA型肝炎、結核、猩紅熱などを媒介する可能性があると見られている。
サンパウロ州環境局の外郭団体である州環境公社によれば、この2つの墓地は06年から疑いのある地域として認識されており、サンパウロ市葬儀局の調査結果を待っているところだ。葬儀局は「2つの墓地は浅い地下水のある地域ではない」としつつも、「土壌汚染の可能性はあるので調査をしている」という。6月までにこの件への対処を始めると同紙にコメントしている。
この環境汚染調査は07年から検討されていたが、実は09年11月5日まで入札準備が中断していた。この遅滞に対し、環境局や公安局より注意勧告が行われ、ようやく2墓地に調査用の井戸を掘る申請書が3月1日に出されたばかり。
衛生の専門家レジロ・マルケス・シルバ氏は、このような事態をさけるための規制はすでにあるが「いつも実施は二の次」という。「約75%の墓地には衛生関連の汚染問題があると」とし、この2カ所だけの問題ではないとする。
解決法としては「火葬するのが理想。だが、各墓の下に防水処理をするとか、腐敗体液を吸収するスポンジのようなものを置くとか、欧州のように棺桶の下部に体液を処理する化学物質をいれる方法もある」と紹介する。
毎日、ビラ・ノーバ・カショエイリンニャ墓地の中を抜け道として使っているフェリックス・シルバさんは、「ここを通ると20~25分の短縮になる。初めて危険だという話を聞いて、〃踏む場所を注意する〃ようにするよ」と答えた。
ビラ・フォルモーザ墓地には湧き水が出ている場所があり、近隣の住人や路上生活者に生活用水として使われている。
その一人、定年退職者のマリア・エミリア・バスコンセーロスさんは「以前はみんな飲んでたのよ。でももう止めるわ」と驚いた様子。ジョゼ・アジルソン・セルケイラさんも「今は水道水だけど、子供の頃はみんな井戸水を使っていた。今でも庭木に水をやってるし、乞食は身体を洗ったりしてるよ・・・」。
墓場の近くで子や孫だけで遊ばせたり、墓地の湧き水に触ったりしないよう、注意する必要があるようだ。