ニッケイ新聞 2010年4月8日付け
3日からブラジル訪問中のフォード社CEO(最高経営責任者)のアラン・ミュラリー氏が8日、ルーラ大統領に対し、2009年11月20日に発表した40億レアルの投資計画を拡充し、ブラジル生産車両を世界市場に売り出す意向である事を発表すると7日付エスタード紙が報じた。2011年から15年にかけての投資計画拡充により、アルゼンチンと共に南米地区の生産を支え、フォード・グループ全体の業績においても、本社ならびにグループの危機を救ってきたブラジルの重要度が益々高まる事になる。
「ブラジルとの約束を再確認するために来た」と話すミュラリー氏は、「一つのフォード」を合言葉とする世界戦略の責任者で、2006年、2008年の赤字克服、金融危機中も倒産などの事態を回避してきた同社グループの社長でもある。
同氏とブラジルとのつながりは、37年間社長を務めた米国の飛行機メーカー、ボーイング社時代からのもの。今回の来伯には、米国フォード社社長のマーク・フィールド氏や、カナダ、メキシコ、南米地区の運営責任者で、世界マーケティング担当でもあるジム・ファーレイ氏を同伴している。
40億レアルの大型投資は、年間25万台を生産しているバイア州カマサリ工場の生産能力の30万台への引上げなどが中心で、南米向け投資としては最大規模だ。
今年第1四半期の国内でのフォードのシェアは11・2%で国内4位だが、同社にとりブラジルは、国内開発のエコ・スポーツ始め、カーやフィエスタなどの乗用車生産と販売により、過去6年間、順調に業績を伸ばしてきたドル箱的存在だ。
この実力を高く評価した同社では、国内開発のエコ・スポーツを世界市場に売り出す計画を展開すると共に、今年米国で発表する新型フィエスタには、サンパウロ州タウバテ工場製エンジン搭載など、世界戦略車へのブラジルの関与の度合も拡大させる。ミュラリー氏は、生産コスト削減のため、同車部品の60~65%は世界共通にするともいう。
3日に来伯、週末はサルバドール工場、6日にはサンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ工場を視察した一行は、6日夜、販売店関係者とも会合。7日には、Focusなどの大型車を生産しているアルゼンチンでの戦略について説明するため、クリスチーナ・キルチネル大統領とも会談する。
減税処置の恩恵を受けて販売を大きく伸ばしたブラジル自動車産業界4位のブラジルフォード社は、2009年に30万台以上販売の実績を持ち、フォード・グループ内での売上3位。ブラジルへの大型投資計画を完工するための追加投資の詳細発表は、本日に持ち越されているが、ドル箱ブラジルの今後への同社の期待は大きい。