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心霊治療師が映画に?=ジョアン・デ・デウス=指を入れる外科手術も

ニッケイ新聞 2010年4月9日付け

 人呼んで「ジョアン・デ・デウス」。ゴイアス州アバヂアニア(Abadiania)という人口わずか1万2千人の片田舎に、世界から治療希望者が集まる心霊治療師がいると3月21日付けフォーリャ紙が報じている。
 本名はジョアン・テイシェイラ・ファリアス、68歳。彼が住む精霊センター「ドン・イナシオ・ロヨラ」には初診用、再診用などに分かれていつも大変な列ができている。ジョアン氏は霊媒の一種で、幾人もの精霊がついており、それが入れ替わり降りてきて治療をするのだという。
 州都ゴイアニア市から88キロ、首都ブラジリアからなら100キロ。そんな場所に欧州人、アメリカ人、アジア人の順でたくさんの神秘主義を信奉する治療希望者が白い服を着て集まっており、計22カ国から来ているという。ガンや足の不自由な人、手足が動かない人などいろいろだ。
 ジョアン氏は一日に600~800人の治療をする。何の広告もしていない。みな口コミだ。大半は手当をして薬草などを処方されるだけだが、実際に身体にメスを入れる心霊外科手術も行われる。バイア州サルバドール市から来たマルコス・ファルコンさん(46)は「彼は外科用メスを使って胸の近くにあったしこりを取った。ちょっと血が出たが痛みはまったくなかった」という。

映画化の話も

 映画『ウルチマ・パラーダ174』(2008年)などの作品で知られるブルーノ・バレット監督は、2月に同地を訪れて強い印象を受け、映画化することを考えている。「まるでガルシア・マルケスの小説に出てくる町の印象が薄くなるぐらい、特異な場所だ」。道行く人がみな、車椅子だったり、包帯を巻いていたり、顔に軟膏を張っていたり。しかも、インド人、日本人、ドイツ人など信じられない多国籍で、仏教徒、ユダヤ教徒、カトリックもいて、とにかく多様。
 「英語が日常生活の一部になっている。あの外国人の存在感の強さには驚く」という。ジョアン氏に直接あった印象は「素朴な人、原始的といっていいぐらいだが、強い願望を持っている」と表現する。治療費を請求しないが、大半がなんらかの寄付をしていく。
 「私は無宗教で非常に疑い深い性格。心霊外科手術を撮影した時、大変注意をしてみた。消毒もしていないメスで胸部に傷をつけて、そこから指を差し込んだ。それは公衆の面前だった。この女性は乳ガンの治療に訪れていた。血は少ししか出ず、差し込んだ手は手袋もしていなかったが、腫瘍のようなものを取り出した」と証言する。
 同監督は「一番驚いたのは、ペンチで針を持って傷口を縫っているときに、その女性は瞬き一つしなかったことだ」とし、「彼のことを詐欺師だとかいう人もいるが、そんな単純な話ではない」と締めくくった。