ニッケイ新聞 2010年4月10日付け
入札直前の総工費額見直しなど、紆余曲折を経た後、20日の入札を待って実現かに見えたパラー州シングー川ベロ・モンテ水力発電所建設問題が、再び暗礁に乗り上げる可能性が出てきた。8日付伯字紙が、ゼネコン大手のオデブレヒトとカマルゴ・コレアらが組むコンソーシアムの入札参加見送りと、検察庁による司法当局への環境許可取り消し請求を伝えたもの。9日付伯字紙は、最低二つのコンソーシアムが組まれて入札が行われる可能性を伝えているが、「入札は何としてでも実施」とのルーラ大統領発言こそ問題だとの声も上がっている。
先住民の建設反対は20年近く、08年5月には地域住民も参加した討論会でエレトロブラス技師が先住民に襲われ大ケガ、09年末には環境許可の発行が遅れていると政府から圧力をかけられ国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)職員が辞任、入札日程決定後も総工費額見直しなど、難産の気配が続くベロ・モンテ建設問題。
第一次経済活性化計画(PAC1)の目玉企画でもあり、ジルマ・ロウセフ次期大統領候補にも気がかりな問題だが、今回のゼネコン2社の脱退は、上限額見直し交渉でも参加見送りをちらつかせてきた両社が、政府側から電力価格上限額引上げはないとの回答を受けた事で生じたものだ。
同水力発電所建設には300億レアルが必要とする両社の要求で、総工費上限額を160億から190億に引き上げた政府も、電力価格はそれ以前にも68レアル/メガワット時(MWh)から83レアル/MWhに変更しており、引上げには応じられないと回答。
より良い条件引き出しのための脅しだと思っていた政府やエレトロブラスには予想外の入札不参加だが、マルシオ・ジメルマン鉱山動力相は、電力価格などの見直しはないと確認。エネルギー調査のEPEマウリシオ・トルマスキン社長も、両社が抜けても、2~3つのコンソーシアムが入札参加の筈と楽観的。
ただ、アンドラーデ・ギテーレスとヴォトランチン、ネオエネルジア、Valeのコンソーシアム以外に参加しそうなのは、ベルチンを軸にOAS、ケイロス・ガルヴォンなどが組んだコンソーシアムのみ。過去の実績や資金力から、入札は形だけのものになるとの見方や、入札の先延べを懸念する声も出ている。
環境か開発か
アマゾン開発に厳しい国際社会の声もあり、マリーナ・シウヴァ元環境相が強く反対し、辞任劇にまで至った同発電所建設問題には、広範囲に水の流れを変えるため動植物や地域住民の生活に多大な影響が出る、雨次第で水量が変わり乾季発電量は最大発電量の10%程度などの問題もある。
にも拘らず、環境許可取り消し請求には連邦総弁護庁が不服申し立てなど、政府側は現行のまま押し切る構えだ。
建設反対運動は今も続き、マット・グロッソ州(MT)シングー国立公園にあるシングー川周辺の先住民15部族が、同州カポト・ジャリナ先住民保護区ピラス村で20日、その他地域でも、11日にはサンパウロ市、12日にはブラジリア、14~15日にはMTでの抗議活動が予定されている。