ニッケイ新聞 2010年4月13日付け
周囲から早く出馬表明をと言われながら、じっと機を待ち続けたセーラ前サンパウロ州知事が10日、ブラジリアでもたれた民主社会党(PSDB)、民主党(DEM)、社会大衆党(PPS)の合同集会で、正式に次期大統領選候補として名乗りを上げたと11日付伯字紙が報じた。予定を上回る6千人もの参加を得た集会は、PSDBサンパウロ州支部長や選挙参謀のルイス・ゴンザレス氏も、演台やメインホールに近づくのに一苦労する程熱気にあふれたものとなった。
大統領選候補としてセーラ氏の演説基調は、故タンクレード・ネーヴェス氏を間接選挙で大統領とした時から始まったブラジル民主主義25年の歩みを踏まえ、国民のため、国を一つとして、人権を尊び、法を遵守した政治をと訴えるもの。
貧困者と富裕者、北伯と南伯、大都市と中小都市など、国を分裂させ、対立させる様な政策ではなく、民主主義国家として、国を一つとする政府をと訴えた演説が、現労働者党(PT)政権やジルマ候補を間接的に攻撃するものであった事はいうまでもないが、従来のセーラ色を払拭し、円熟味なども見せる演説は、会衆の心を捉えた。
フェルナンド・H・カルドーゾ元大統領、PPS、DEM、PSDB党首、アエシオ・ネーヴェス前ミナス州知事に続いて演台に立ったセーラ氏は、「次期大統領は自分以上の業績を残すべき」とのルーラ発言にも、現ルーラ政権はカルドーゾ政権が敷いたレールの上を走ったのであり、自分達だけが功をなしたかの如き言動は誤りと反論。
同氏の直前には、25年前のタンクレード・ネーヴェスによる民主政権立ち上げ時にPTは協力を惜しんだ一方、PSDBは、コロール元大統領の弾劾裁判や、イタマル政権のレアルプラン導入など、ブラジルの歴史の節目に参加してきた事などをアエシオ氏が強調。同氏は、ミナス州からの選挙キャンペーン開始を勧め、「今日からはあなたの声は我々の声だ」とセーラ氏を紹介した。
アエシオ氏自身は、純血コンビ実現を望む人々が「副、副、副!」との叫びを、「私は上議選に出馬」とかわした一方、セーラ氏の選挙遊説には同行できると表明。
教育問題やインフラ整備なども所信表明演説に盛り込んだセーラ氏を援護するPSDBの面々にとり、メンサロン事件や公示期間前に選挙活動に該当する言動があったとして罰金を科されたルーラ大統領など、法や秩序、人権問題や報道の自由をないがしろにするとの声は、PT攻撃の最大の武器ともなりそうだ。
12日付エスタード紙は、「ジルマ氏とPTとの関係は未知数であり、同氏は、PTのイデオロギーと倫理問題に苦しむだろう」とのアエシオ発言も記載。正式な公示、立候補の届出を前に大統領選はいよいよ熱を帯びてきている。