ニッケイ新聞 2010年4月13日付け
日本のデフレは深刻だし、大卒や高校を卒業した人たちの就職戦線も厳しい。鳩山政権の予算は、景気低迷で税収が37兆円余に落込んだのを補うために新規国債を44兆円も発行しての借金財政という歪さである。これほどおかしい予算は、戦後65年で初めてのことだし、これまでの政府が抱える借金900兆円近くを考えれば国の将来は真っ暗闇で極めて危うい▼こんな借金王国なのにODA(政府開発援助)などでは、かなり気前よく供与するし、取り分け「草の根援助」は超がつく人気らしい。尤も、作家・曽野綾子さんによれば、こうした善意の資金と物資の受け取りは貧困者や罹災者よりも大統領や政府要人が多い―の話は先だって紹介した通りだし、もっと慎重さが欲しい▼それに―日本はもう経済大国の意識を捨てた方がいい。国家の基幹産業である鉄鋼や家電製品で日本は世界一の座に昇りつめ繁栄を謳歌した。八幡と富士の歴史的な合併から生まれた新日鉄は高品質の鉄を生産し、造船も20万トン超のタンカーを造り「経済1流・政治は3流」と流行の言葉までが生まれた▼ところが、パナソニックとソニーの売上げを合わせても韓国のサムスン(三星)に及ばない。新日鉄はインド資本のアルセロール・ミタルの生産量・売上高の半分しかない。勿論、新日鉄の特許は1000件超でア・ミタルは40件と技術的な差は大きい。が、ア・ミタルは新日鉄を買収するの動きもあるようだし―安閑としてもいられない。銀行も世界のベストテンに入るかどうかなのである。まあ―図体が大きく稼ぐのだけが能ではないが―。(遯)