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医療現場の規定が変わる=知らせる責任、知る権利=末期治療の選択は患者に=延命のみの処置禁ずる

ニッケイ新聞 2010年4月14日付け

 1988年に制定された医療倫理規定が改定され、13日から発効となった。12日付伯字紙などによると、数年に及ぶ論議を経て改定された新規定では、末期治療では患者の意思を尊重し、延命のためだけの処置や検査を禁じ、痛みや苦痛を取り除く事を主眼とするなどの変更が行われた。

 末期がんなどの患者にとり、副作用をもたらすだけで症状改善が見られない新薬試用や単なる延命処置は、本人や家族の苦痛を長引かせるだけとの批判は従来からあった。今回の改訂では、本人や本人が意識を失う前に指定していた人物が、延命治療を拒否出来る様になるなど、不要な処置禁止が最大の特徴だ。
 2005年に死去した法王ヨハネ・パウロ二世や、2000年死去の故マリオ・コーヴァスサンパウロ州知事が、苦痛削減処置だけを求めた例などを参考にした改定だが、検察庁の疑問提示で前規定が明文化しなかった尊厳死への言及は避けている。
 患者の意思尊重は患者自身の〃知る権利〃保障ともつながるもの。連邦医師審議会(CFM)では、自分自身で意思表示が出来なくなった時、どの様な治療法を採用し、どの様な治療は拒むかなどを選択する人を選び、登記所に登録するシステム(ポルトガルやスペインなどで実施)を年内に確立させるつもりだ。
 一方、医師が出す薬は本当に効くからか、製薬会社から報酬を得るためかといった疑心暗鬼は、治療効果や医師と患者の信頼関係確立にも影響するため、新薬試用や新しい検査適用、宣伝への参加などで、医師が製薬会社や薬局からの報酬を受ける事を禁止。無診察で薬を出す事や、効果確認のための偽薬処方も禁止される。
 また、手術などの前に行われていた、目的や手順、治療に伴い起こり得る症状などを説明後の同意確認は、検査や手術に限らず、治療の各段階で求められる様になる。
 このために是非必要なのが、読める字で書かれた処方箋や説明書。医師の字の読み辛さは定評があるが、書いた本人も何を書いたか分からない例さえある現状が改善されれば、医師と患者の信頼関係やコミュニケーション確立にも役立つ。
 また、1988年制定の前規定以降、発達した遺伝子操作などに関しても、試験官ベビーの性選択の禁止などが盛り込まれた他、公立病院で、民間の保険利用者と統一保健システム(SUS)利用者を区別するのを禁ずる規定も盛り込まれた。
 同規定違反の医師や病院、管理職、保健局担当者には、訓告から医師免許剥奪まで、種々の罰則が定められている。