ニッケイ新聞 2010年4月16日付け
15日にブラジリアで2回目のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)首脳会議が開催されるにあたり、今後の新興4カ国の動向に世界的な注目が高まる。同会議開催を前に、ゴールドマン・サックスの経済学者でBRICsを提唱したジム・オニール氏が、15日付エスタード紙のインタビューで、BRICsのさらなる可能性について次のように見解を示した。
▼BRICs間で、政治的協力の余地はあると思いますか。
「4カ国とも全く違う政治形態を持つから、それは難しい。ただし、光ファイバー通信の導入や世界銀行、国際通貨基金といった機関に対する対応に足並みを揃えることで、全世界に大きな影響力を持つことができる」
▼それはどういう理由からですか。
「BRICsの国内総生産は世界全体の16%を占め、2020年には、その規模はアメリカに相当するものになるからだ。また、消費市場で最も早い成長を遂げるのもこの4カ国。各国ともにその規模はG7のカナダを越え、中国市場は日本を上回る勢いだ」
▼G20の存在は、どのように考えていますか。
「一般的に見て、BRICsの存在がG20を支えているのは確か。BRICs諸国がそれぞれに、米国、日本、EU連合を加えた新たなG7を結成する必要も出てくるかもしれない」
▼最近、一部のアナリストの間ではBRICsにロシアは入るべきではないと言われていますが。
「それはおかしい、もちろんロシアも参加するに値する。ここ10年、ロシアの経済状況はいいとは言えないが、国内総生産の伸び率はブラジルも越えるほど非常に高い。次の20年間のうちに、ロシアは世界で5~7番目の経済大国になるはずだ」
▼BRICs諸国にとって、経済面での最重要課題は何ですか。
「ブラジル、中国、インドの3カ国に関しては、インフレの抑制が最も急がれるべき課題だ」
▼その根拠は何ですか。
「世界経済危機後、経済を刺激しすぎてインフレ上昇が顕著だった。この3カ国の選択は正しかったが、今は再軌道を図る時期に来ている」
▼その3カ国のこれまでのインフレ対策はどう見ていますか。
「今までは問題ない、ただ本当に大変なのはこれから。ブラジルの場合は、政策金利を高くし、金融を引き締めていくのが鍵。その意味で、今月27、28日に行われる通貨政策委員会の会議に注目している」
▼ブラジルの場合、増税も含めた対策となる可能性が考えられますか。
「その通り、増税は賢明な処置。他の金融政策や関税を圧迫せず、経済を抑制できる。それがこの選挙の年に実現できるかは疑問だが、その価値は十分にあるようだ」
▼今年の選挙は、どのようにみていますか。
「セーラ、ジルマ両氏のどちらが選ばれるかは分からないが、誰が当選してもやるべきことは2つ。中央銀行の独立性を守りつつ支援を続けることと、経済での政府関与の縮小に努めることだ」
◎ ◎
■ジム・オニール
英経済学者。2001年よりゴールドマン・サックスの国際経済調査・分析チームリーダーを務め、BRICsを提唱したことで知られる。