ニッケイ新聞 2010年4月21日付け
【既報関連】1996年4月17日―土地なし農民運動(MST)関係者にとり忘れられない闘争の記念日を中心にとした「赤い4月」の活動が、今年も19州と連邦直轄区(DF)で繰り広げられ、国立植民農地改革院(Incra)本部なども占拠されたと19日付サイトや20日伯字紙が報じた。MSTのメンバー9万家族は未だにビニールシートで覆った小屋に住み、5年以上、定住地を持てないメンバーもいる。一方、一連の行動は社会運動潰しに反対するものとの意識で、「赤い4月」に参加している人々もいる。
今年の「赤い4月」は、選挙年には珍しく過激な活動が予定されていると3月25日付本紙で報じたように、12日から26日までのMSTの活動が一段と激しさを増してきた。
11日から始まったMSTの農地侵入や政府関連施設などの占拠は、19日には、19州ならびにDFでの抗議行動などに拡大。政府が積極的に農地改革に取り組み、定住地を提供するよう促すためだというMSTの行動は、19日のIncra本部の占拠により、政府との交渉の糸口を掴んだようだ。
「ルーラ政権は約束通りの改革を行っておらず、5年以上、道路脇でキャンプを張り、大変な生活を強いられている家族もいる」と訴えるのはMSTコーディネーターのジョゼ・バチスタ・デ・オリヴェイラ氏。
一方、19日にブラジリア、サンパウロ州などの本部が占拠され、17日のペルナンブコ州も併せると、6カ所の本部を占拠された形となったIncraでは、「現政権下では3600カ所以上で定住が行われ、57万4千家族が農地改革計画の対象として登録されている」と反論している。
Incra占拠は「赤い4月」の活動の一端で、19日には、ペルナンブコ州レシフェや、バイア州のサルバドールやフェイラ・デ・サンタナ、セアラ州フォルタレーザなど、各地でのデモ行進や道路封鎖なども行われた。
中には、労働者党(PT)のヴァウミル・アッスンソン下議の様に「社会運動潰しに抗議する意味でデモ行進に参加した」という人々もおり、MST寄りの姿勢が他政権より強いルーラ政権下では、定住地を求めたりして起こす侵入事件も多発と16日付エスタード紙が報じている。
今月だけで農場など68カ所への侵入を行っているMSTに対し、民主党(DEM)のカチア・アブレウ上議らが参加する全国農業連合(CNA)は、侵入は罪であるとし、所有地回復と司法介入を求めるキャンペーンを実施中だ。